吉川市

吉川市・障害者の就労に革新

 「利用者の就労実績を増やし、健常者と同じ賃金がもらえる人を一人でも多く増やしたい」と熱く語る。就労移行支援事業所とは、障害のある人が一般企業などに就職するできるよう、就労に必要な知識の習得や訓練をサポートする通所型福祉サービスだ。

 運送会社の営業職や海上自衛隊などに勤めていたが、2009年、息子が誕生して3、4か月後に癲癇を発症し、3、4歳頃に知的障害と診断されたことが人生の転機となった。「子どもの将来を考えた時、本人のやりたいことをやらせたい」と思い立ち、自ら事業所の起業を決意した。
 知り合いの後押しもあって、17年に「torepal」を起業。志木市の運送会社内に就労移行支援事業所「Torepania」を設置し、その運営を業務委託で担った。個人事業主だったため法人化を進めて運営にあたっていたが、翌年、経営が立ち行かなくなり、「県中小企業同友会」に参加して社長としての勉強を改めて行うことにした。

「Torepania」を運営する「torepal」の山口社長

 昨年10月、同友会で行われたオンラインの「障害者問題全国交流会」に参加。障害者アートを壁紙にしたら、好評を得た。山口社長は「障害者のことを多くの人にPRすることで大きな力が生まれるのでは」と思ったという。
 フォークリフト技能講習費用などをクラウドファンディングで募ったところ、同友会代表で吉川市の土木設計事務所「ホウユウ」の太田久年社長が協力。その後、意気投合し、今年5月1日「ホウユウ」の中にも「Torepania」を開設した。こちらでは、設計事務所内にあることを強みに、設計のスキルを扱えるエンジニアを育てようとパソコンを使って製図を行うCADの技術修得に特化した形となっている。

 志木市と吉川市の両事業所の利用者間の交流も行い、互いの技術やビジネスマナー、自己理解について学び合う。「お互いが交流することで利用者もスタッフもモチベーションが上がる」と言う。
 課題は「就労実績をもっと多く作ること」としながらも、「新しい障害者雇用の形態として、企業一体型の就労移行支援事業所が各地に広がるモデルケースになれば」と意欲を見せている。