厳しい経済情勢を中小業者が生き抜くには、知恵や努力のほか、業者間の「連携」も欠かせない。
それを実現しているのが、異業種の経営者らがつくる「DekiTech(デキテク)合同会社」。
「経営者の資質を磨き、各社のスキルアップにつなげ、研修を行いながら地域の人々と携わる企業に」と代表の中村さん。
中村さんは元々、皮革製品の製造販売会社を営んでいたが、2011年の東日本大震災以降の嗜好品離れなどから、経営不振に陥る。危機打開策を求めて、所属する「埼玉中小企業家同友会」の仲間たちと悩みをぶつけ合った。そこで生まれたのが、「互いの技術を共有し、新しいものを作れないか」―。金属加工、照明、溶接、精密機器など異業種の経営者らの思いが一つになる。16年10月のこと。
「モノ、仲間、未来ができてく」と、Deki(できる)+Technology(テクノロジー=技術)から、グループ名を「DekiTech」と名づけ、月1回、互いの企業を訪問するなどして、それぞれの技術を共有し合った。そうした研さんの最初の結晶が、皮革製ワインボトルケースだった(18年)。
現在の主力のキャンプ用品のアイデアは仲間たちでたき火を囲んでいる時に生まれた。20年10月、防災にも使える「多機能テーブル」を製造販売したところ、300個を1日で完売。「販売したい」と小売店が殺到する人気商品になった。
昨年1月、合同会社を設立した(参加7社)。ガスコンロ台、ライト、ランタンなどを次々に開発、販売した。「企画、製造、販売を参加企業が一括して行うことで、各社のスキルアップなどにも役立っている」と中村さん。
今後は、キャンプに限らずアウトドア用品全般、さらには防災用品にも視野を広げる。
「世の中に必要な物や、支援を必要とする人たちの〝市場を創造する会社〟」を目指しているが、中村さんは「5年以内には代表を交代し、参加する皆が実践の中で経営を学び、〝水平分業〟を実現していきたい」と異業種連携の理想に向けて意欲を燃やしている。