一時は解散の危機を迎えた八潮市の市民団体「八潮オリジナル市民ミュージカル」が見事に”再生”し、来月20日、同市中央の八潮メセナで、オリジナル脚本によるミュージカル「さよなら タイヨウガクエン」を公演する。主催団体の解散、共催する同市との意見の相違、内部分裂……といった危機を克服しての公演で、出演する5歳から15歳まで14人の子どもたちは練習に余念がない。主宰者の白石雄大さん(57)は「子どもたちの自主性を尊重しながら作り上げた舞台をぜひ楽しんで」と話す。
同ミュージカル団体は2009年、「やしお生涯学習まちづくり財団」が中心となって発足。団員は老若男女からなり、12年には年2回公演を実施するなど活躍したが、同年、財団は解散してしまった。
このため、翌年、参加する子どもたちの保護者らが共同代表を務めて「八潮オリジナル市民ミュージカル実行委員会」を立ち上げ、同市と共催で公演を継続した。ところが、共催の市側と意見の相違でしばしば衝突し、保護者同士で対立することもあって、14年頃には解散の危機を迎えてしまった。
こうした状況を「『八潮の宝』とまで称えられた市民ミュージカルをつぶすわけにはいかない」と憂えた白石さんが新たな主宰者として、“再生”のかじ取り役となった。
俳優、脚本家の白石さんは団体の立ち上げ当初から関わっており、脚本家の倉本聰さんが1984年に開設した俳優、脚本家の養成所「富良野塾」(2010年閉塾)の第3期生。
再スタートした15年からは、子ども主体のミュージカルとして公演活動を続けている。実績を重ねて県教委育委員会や、同市の後援も得られるようになった。
「自己紹介すら満足にできず、親からもミュージカルなんて無理と言われてきた子どもたちが、練習を重ねるうちに生き生きと自分を表現できるようになった」と白石さん。
小学1年の時から参加している松澤心乃実さん(15)(同市立八幡中3年)は「楽しく充実したレベルの高いダンスを披露したい」と2月公演に意欲を燃やす。また、友人に誘われて参加した宮嵜慎清君(14)(同潮止中2年)は「僕より両親の方がこの集まりを楽しんでいる」と笑顔で話した。
白石さんは「見る人に感動を届け、多くの人に希望を感じて欲しい。そして自分を表現する力、みんなで作り上げる『共創力』ミュージカルで育み、未来につなげていきたい」と述べた。
八潮メセナでの「さよなら タイヨウガクエン」公演は2月20日午後1時開演、同3時半開演の2回公演(入場無料)で実施される。