八潮市

八潮市/〝垳〟の歴史をたどり完歩

「発見と驚きで新鮮」 八潮~東京 方言漢字ウォーキング

 江戸時代に八潮市垳から東京都台東区に寺が移り、それとともに地域独自の漢字「方言漢字」の「垳」が伝播した道のりをたどる「方言漢字ウォーキング」がこのほど行われ、14人が往時をしのんだ。

 同市垳の常然寺から出発し、東京都台東区の仰願寺までの約12㌔を歩くもので、仰願寺の開創400年を記念した企画。仰願寺は1623年、八條領垳村(現在の八潮市垳)に草創され、48年に現在地に移転。「垳地蔵尊」の愛称でも知られている。垳地蔵の歩んだ道と想定される「下妻道」をたどりながら、方言漢字「垳」の伝播した意義を考えようと、「八潮の地名から学ぶ会」が主催した。

仰願寺の「垳地蔵」に手を合わせる参加者

 この日は朝方こそ雨模様だったものの、常然寺本堂で住職が完歩祈念の経を読み上げ、出発する頃には雨も上がり、参加者は垳川沿いの古道の名残を丹念に観察しながら歩いた。参加者たちは「日頃、意識することなく通過していた場所も、発見と驚きに満ちていてとても新鮮」と、感嘆の声を上げていた。

 仰願寺到着後、「垳地蔵」に対面し、完歩を報告。住職から地蔵や縁起の説明を受け、仏前などにともす細く小さい「仰願寺蝋燭」の誕生秘話などの話を聞いて、楽しいひと時を過ごした。

 八潮市内から参加した鴨狩昌宏さんは「身近な生活道路も少し意識するだけで違った景色に見え、楽しく意義深かった」と強調。千葉県松戸市から参加したポーランド人のグジェゴシ・ヴァシニェフスキさんは「日本語と漢字を学びに日本に来た。垳Tシャツを着て歩き、気分も爽快。『垳』の由来も感じることができた」と喜んでいた。
 
同会では「『垳』は全国唯一の地名で、そこから派生した垳川、名字の垳田姓にしか用いられない、方言漢字の代表例」と指摘。「以前、地名変更が予定されたことで、地元住民や全国から保存・継承の声が集まり、一躍有名になった。現在も区画整理が進行中で、『垳』の存続について今後の動向にも注目している」と、「垳」が消え去ることへの強い懸念を表明した。