草加市美術展で「東武よみうり新聞社賞」を受賞した 北村旭艶さん
「字と向き合う空間や時間が好き」と目を輝かせる。
10月25日、草加駅東口のアコスホールで開かれた「第42回草加市美術展」に出品した書「陳方洲詩」で東武よみうり新聞社賞を受賞した。偶然目にした本の詩が自分の心境と一致したことから、その中の句を選んだ。昨年から高校生に書を教え始めており、「隷書らしい作品を生徒たちに見せるきっかけになった」と話す。隷書は漢字の書体の一つで、リズミカルな美しさが特徴だ。
東京・目黒区出身。父親の仕事の関係で千葉、福岡、岡山などを転々とする。そんな中、小学校3年生の授業で書道が始まるのを機に、教室に通い始めたのが書道との出会いだった。岡山県立岡山一宮高校卒業後、「書道で受験したい」と、東京・千代田区の二松学舎大学中国文学科書道コースへ。大学では水墨画の技術も習得した。「草加市美術展にも幾度となく書と水墨画の両方で出品してきた」という。
卒業後、美術館に勤務。2年後、スキルアップを目指して転職した会社で書道部を立ち上げ、稽古や展覧会に励んだ。結婚後に移り住んだ京都では、扇子に絵付けする修学旅行用体験教室のアルバイト講師や、カルチャーセンターで書道3クラス、水墨画1クラスの講師を務めた。2009年からは京都の御靈神社での展覧会ポスターの絵も描いている。その頃から「仕事をするなら教壇に立ちたい」と考えるようになった。
47歳で草加市に。教員免許を生かし面接を受けるなど、夢に向かって活動を続けた。同市や県南部教育事務所などに登録。しばらくは東京で放課後学習支援などを行いながら、新卒の教師が研修を行う期間だけの臨時講師などを務め、少しずつ自信に。昨年4月、私立高校国語科非常勤講師を経て、通信制高校「三幸学園」の国語科講師に。
11月からは念願の書道を担当した。1年、書道を教えてきて改めて書道の楽しさに気づき、来年のカリキュラムにも意気込みを見せる。
「50歳を過ぎても国語や書を教えることができて、こんなに幸せなことはない」と喜びをかみしめていた。 (佐藤 龍一)