三郷市在住のフィンランド文学翻訳家、末延弘子さん(47)の講演会「自然とともに生きるフィンランドのくらし~ムーミン谷の向こうに見えるフィンランド文学」が、3月26日、三郷中央におどりプラザで開かれた。同市制施行50周年記念「みさと桜ブックスフェス2022」のイベントで実施、市内外から39人が聴講した。
末延さんは、フィンランド国立タンペレン大学フィンランド文学専攻修士課程を修了し、フィンランドの現代文学や児童書の訳書が多数、同政府から外国人翻訳家賞(2007年)を受賞している。
この日は、北欧フィンランドの国土や歴史、社会状況、自然を大事にする国民性などを説明しながら、フィンランド文学の魅力について語った。
「フィンランド人は、自然と共にある暮らしを大事にし、自然を畏怖する心を持つ。自然は意味のある言葉としてとらえ、文学にも表れている」と語り、死生観についても、「終わりではなく、あらゆる自然現象になる始まりと感じている」という。
フィンランド語は母音が8つあり使用頻度が高く、その特徴を踏まえ、末延さんが自身で翻訳した詩などを原語で朗読し、その音の響きの美しさを披露した。
日本でもなじみの深い「ムーミン」は、作者のトーベ・ヤンソンが、ソ連との戦争で喪失感や混乱の中で意欲を失い、苦しい現実から向き合うために、「戦争がなく、みんなが主人公となるムーミン谷を描いた」と解説しながら、「共通するのは多様な価値観を受け入れていることで、異なる価値観を持つ人が多数登場し、みな違っているのは当たり前、どのように共生していくかを物語にしている」と語った。
講演を聴いた同市高州の主婦(55)は「ムーミンくらいしか知らなかったが、自然を大事にするのは日本人と共通するところもあり共感できた」と話していた。