「多くの日本人がムーミンの本を求めてやって来る。日本語訳をしてみないか」
北欧フィンランド・タンペレ大学に留学中、「ムーミン谷博物館」(同国タンペレ市、現・ムーミン美術館)の管理者に誘われた。人生の方向が定まった瞬間。
2016年から住んでいる三郷市の図書館には、「ムーミン」の絵本など、フィンランドの子どもの本をはじめ、2年かけて訳した「清少納言を求めて、フィンランドから京都へ」(ミア・カンキマキ著、草思社)など、多くの訳書が並ぶ。「広報みさと11月号」でも紹介された。
福岡県北九州市出身。中2の時、月刊誌の企画でサンタクロースに手紙を書いたのがフィンランドとの関わりの始まり。もっとも、「返事は日本語でがっかりした」。
フィンランド文学に興味を持ち、東海大学北欧文学科へ。フィンランドに留学し、二つ目の「タンペレ大学」で本格的に学ぶ。
翻訳で大切なことは、「一つひとつの言葉と丁寧に向き合うこと」ときっぱり。
25歳で卒業して帰国。アルバイトしながら、フィンランド文学を出版社に持ち込むが、「なかなか形にならなかった」。5年前から白百合女子大学の非常勤講師。フィンランドを中心とした北欧の児童文学を教える。
「これまでの経験が翻訳の糧」とし、「言葉は人を表す」と話す。言葉と向き合ってきて得た実感である。(佐藤 龍一)
フィンランド文学翻訳家 末延 弘子さん