三郷市

三郷/音楽通じ居場所を作る

地域貢献へ「音あそびラボ」を設立した

 「音楽を通じ、大人も子どもも自分らしくいられる場所を作りたい」と話す。
 さまざまな楽器を使って遊ぶ「居場所×音楽 音あそび小屋」を月に3回程度、三郷市立ピアラシティ交流センターで開催。また、地域の音楽家と交流し、赤ちゃん連れの保護者にも楽しんでもらう参加型の「みんなでつくるコンサート」や、絵本の読み聞かせ歌などの活動を行っている。学校や職場、家庭以外で自分らしく過ごせる「第3の場所」を提供するのが目的だ。

音楽を通し、第3の居場所作りに取り組む木下大輔さん


 木下さんは兵庫県西宮市生まれ。父親の仕事の関係で転居を繰り返した。中2の時、友人の影響でギターにはまりバンドを結成、学祭などで披露した。「親に高校に行きたくないと言うほどのめり込んだ」。専門学校卒業後はプロのミュージシャンが経営するライブバーのレギュラーメンバーとして本格的に活動を開始し、22歳で結婚した。

 だが、2011年、手指のしびれや親指などの運動障害が起こる「手根管症候群」を発症し、演奏活動を断念。仕事も失い、楽器も処分した。「自分には何もないと殻に閉じこもったが、妻が献身的に支えてくれた」という。

 その後、保育士の資格を取り児童館に勤務。野外活動や国際支援などのボランティア活動で「手が万全じゃなくても音楽を通して役に立てることがある」と考えるようになった。転職した住宅メーカーで三郷市内の会社に配属されたが、コロナ禍で行動制限に。その中で地域の人々の優しさに触れ、「地域の一員として貢献したい」と、22年、音楽教室講師の妻と二人三脚で演奏活動を開始した。

 そこからの縁で、同じ志を持つ仲間の協力を得ることができた。音楽を通して行政と連携し、地域課題に取り組むことを目指して昨年10月、一般社団法人「音あそびラボ」を設立。地域イベント参加や音楽による交流を目指す。

 「音楽にはさまざまな楽しみ方がある。音の出し方も決められたものではない。いろいろな音が集まる中で自分の価値を見出し、自分らしくいられる場所を見つけてほしい」と話している。  (佐藤 龍一)