「せっかく入学したのに大学に一度も行っていない。友だちもおらず寂しい」「仕事がなくなった。もう死にたい」――。こんな若い女性からの相談が「埼玉いのちの電話」(事務局・さいたま市)に相次いでいる。コロナ禍の影響が大きいと見られる。こうした中で、全国最多の相談を受けている、「同いのちの電話」では、280人の相談員のうち30人がコロナ禍で自宅待機中。切羽詰まった声に十分対応し切れず、「電話がつながらない」との苦情も。このため、「同いのちの電話」は、越谷市などに一週間に2、3日間、“サテライト型”の「いのちの電話」を開設して、きめ細かい相談体制を整える準備を進めている。
国の統計による全国の自殺者数は昨年2万1081人を数え、11年ぶりに前年を上回った。うち女性は7026人(前年より935人増)。過去5年間で最多となった。
今年が開設30周年の「埼玉いのちの電話」は さいたま市と川越市に計7回線。ボランティア相談員が月2、3回のシフトで対応している。相談件数は昨年1年間で2万2541件。女性は1万2104件と半数を超え、そのうち「死にたい」との自殺願望は2020件にのぼった。
特に2014年5月にスタートした電子メールの「インターネット相談」が増えており、10代から30代の59%がネット相談。昨年は計726件のネット相談があり、「特に10代以下が急増する傾向」という。
同いのちの電話の理事で相談員の松井晴美さん(65)は「高校や大学がコロナで休校になり、『外に出られない』『友だちができない』ことから、『生きている意味がない。死にたい』という悩みが多くなっている。10代からのメールが急増している」と話す。
また、コロナ禍の緊急事態宣言の解除後、「外に出るのが怖い」「孤独感を感じる」、「うつっぽくなった」などの不安が寄せられている。中でも、女性の相談が目立つ。夫の在宅勤務や子どもの学校の休校などで、人間関係が“内向き”となり、外の人間と話し合うなどストレスの解消機会が減ったと考えられている。
また、同いのちの電話の内藤武・事務局長(77)は「女性は非正規雇用が多く、雇い止めなど経済的な打撃が大きい」とし、「女性の自殺の急増は、相談現場の感覚では不思議ではない。昨年は著名人の自殺も影響しているのではないか」と分析する。
相談員も悩みながら電話を取っており、深刻な内容の相談にダメージを受けることもあるという。1日に3500件の着信のうち、電話を取れるのは70件ほど。
こうした状況を改善するため、サテライト型の「いのちの電話」を県東部(越谷市が候補地)に設置するよう準備を進めている。
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相談員は約1年半の養成講座を受講し認定を受けることが必要。同いのちの電話は、相談員募集の説明会を今月11日午後2時から越谷市中央市民会館で開く。事前予約不要。
問い合わせは「埼玉いのちの電話事務局」(TEL048・645・4322)へ。なお、相談電話はTEL048・645・4343(24時間対応)へ。
若い女性の悲鳴深刻・「埼玉いのちの電話」