越谷市

越谷に「とくし丸」が巡回

 地域内にスーパーマーケットが一軒もない越谷市荻島地区内で、軽トラックの移動スーパー「とくし丸」(本社・徳島市)が巡回を始め、住民らから好評だ。草加、三郷市などでは、すでに運行しているが、越谷市では初めて。「とくし丸」の本社が、地域のスーパーと提携し、個人事業者のドライバーと契約して商品を配送する仕組み。玄関前で好みの商品を買えるだけに、特に高齢者世帯に喜ばれている。けがで動けない高齢者をドライバーが見つけて、病院に運んだ例もあり、
「“買い物難民”の救済だけでなく、高齢者の見守り効果も大きい」と関係者は期待している。

 同市荻島市区で「とくし丸」を運行するのは、同市恩間の石川大介さん(36)。東京メトロの地下鉄運転士を辞め、今年2月、「とくし丸」のドライバーとなった。「一人暮らしのお年寄りが多く、弁当や少量パックの総菜、刺し身がよく売れる。世間話も楽しく、皆さんに『来てくれてありがとう』と言われ、とてもやりがいのある」と石川さん。運行は週2回。店頭価格に10円上乗せして、スーパーとドライバーが半額ずつ分け合うシステム。
 昨年1月、地域の高齢者を支えようと、発足した住民組織「荻島地区地域支え合い会議」のアンケートでは、「移動販売」への希望が圧倒的に多かった。「とくし丸」の運行を考えた石川さんが、移動対象地域について、同市社会福祉協議会に問い合わせたところ、荻島地区での要望を知り、今回の運行が実現した。

 軽トラックの荷台には刺し身やすし、総菜、肉、野菜、果物、パン、お菓子、日用品など約400品目、1000点が並び、車が来ると待ちかねた人たちが集まる。
 弁当と刺身を購入した無職女性(85)は「足腰が悪くて買い物に苦労していた。目で見て買えるので、とても楽しい。リクエストにもすぐに応じてくれる」と便利さを喜ぶ。
 「支え合い会議」代表の水落明さん(78)は「高齢化が進み、買い物に困っている人が多い。インターネットでの買い物も高齢者には難しい。実際に商品を見て買えるので住民皆、助かっている」と話す。同会議は、パソコンでの新型コロナウイルスワクチンの接種予約を代行するなどの活動も行っている。
 移動スーパーのコーディネート役の同市社協・地域福祉課生活支援コーディネーター、染谷優太さん(37)は「現在、市内8地区で支え合い会議が活動している。荻島地区の取り組みは、買い物不便という固有の課題解決のために実現した。たくさんの喜びの声や反響に驚いている」と話している。
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◎東武20日1面
◎移動スーパー・エピソード

 8月下旬、石川さんは南荻島地区の住宅街を回っていた。いつも姿を見せる常連の80代の女性が来なかった。
 それが2回続き、不安に思った石川さんが、女性宅のポストを確認すると、新聞がたまっていた。すぐに越谷市社会福祉協議会を通じて、地域の民生委員に連絡した。民生委員と石川さんが女性宅を訪ねると、女性は腰にけがをして動けなくなっていた。
 病院に連れて行ったため、女性は事なきを得た。石川さんは「孤独死していたかもしれません」と胸をなでおろした。
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◎東武20日1面
◎移動スーパー・つく

 GJとくし丸MN 徳島県徳島市に本社を置く移動スーパーの運営会社。2012年設立。買い物難民問題に着目し、地域のスーパーマーケットと提携し、提携先の商品を運ぶことでコストを削減。契約した自営業のドライバーが配送する。東部地区では草加、三郷、春日部市などで運行している。9月2日現在、全国で868台(県内では39台)が運行している。
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