開催中のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表に初選出された越谷市出身の宇田川優希投手(24)(オリックス・バファローズ)が、10日の韓国戦で鮮烈なデビューを果たし、市民らを熱狂させている。昨年はプロ入り2年目で育成から支配下登録にのし上がり、逆転優勝の立役者となった。今や日本代表として活躍する「ニューエース」に、母校の後輩野球部員や高校野球部監督から熱いエールが送られている。
宇田川投手は七回、3番手として登板。150キロを超す直球と鋭いフォークで2奪三振、1回を無安打無失点に抑えた。
越谷市立西中学校から県立八潮南高校、仙台大に進学。2020年に育成ドラフト3位でオリックスから指名を受けてプロ入り。昨年7月末に支配下登録されると、その半年後に県内出身者として唯一、日本代表入りした。
高校の恩師、語る
宇田川投手を八潮南高校で指導し、現在、県立越谷東高校の齋藤繁監督(59)は「いたって普通の高校生だった」と振り返る。西中野球部時代は正捕手で、投手としては3番手。人見知りで、先頭に立ってチームを引っ張るタイプではなかった。だから、高校の新入生あいさつで「エースになりたい」と言ったのには驚いたという。
齋藤監督は「投げ方は教えていない。環境と経験を与えただけ」という。選手全員に「でも、だって、どうせ、無理、できない」という言葉を口にしないよう指導した。甲子園出場を本気で目指し、常総学院高(茨城県)や日大三高(東京都)など強豪校に直談判して練習試合を行い、経験を積ませた。
この行動が宇田川投手の運命を変えた。3年生の6月、帝京高(東京都)との練習試合でリリーフ登板し、8回13奪三振の好投。対戦相手のコーチの目に留まり、仙台大の監督に話が伝わった。翌週、視察に訪れた仙台大監督から「ぜひうちに来てください。プロにさせます」と突然オファーされた。戸惑ったが、齋藤監督との話し合いで進学を決めた。大学4年でプロ志望届を提出するか迷っていた時、齋藤監督は「八潮南で何があっても諦めない勇気と、無理という言葉を捨てて挑戦していただろ」と説いた。恩師の檄(げき)もあり、志望届を提出、プロへの道を切り開いた。
WBCで活躍する教え子の姿に、齋藤監督は「諦めず勇気を持って挑戦し続ける限り、これからも成長するはず。彼は『持っている』から、何かすごいことをやってくれそう」と期待している。
八潮南高校に横断幕
宇田川投手の母校、県立八潮南高校では、校門前に「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC 日本代表 祝 投手 背番号26 宇田川優希(31期生)」と書かれた縦1メートルX横4メートルの横断幕が掲げられた。
野球部主将の佐々木瑠偉さん(17)は「ストレートや変化球を駆使して日本の優勝に貢献してほしい。宇田川先輩のように自分たちも(これまでの最高成績である)夏の県大会ベスト16を打ち破り、新しい道を切り開いて後輩につなげていきたい」と目を輝かせた。
宇田川投手を高校3年生の1年間、指導した顧問の鈴木久就(ひさなり)さん(50)は「運動能力にたけ、負けず嫌い。ポテンシャルが高く、考えながら野球をやっていた」と振り返り、「その後の人生の糧となるだろうWBCの舞台を楽しみ、今後のシーズンで仕事がこなせる選手になってほしい」とエールを送っている。
世界に羽ばたいて 越谷・西中がエール
宇田川投手の母校、越谷市立西中学校は今年、開校60周年の記念事業として、PTA記念誌「かりがね」にメッセージを寄稿してもらった。宇田川投手は「中学校時代、毎日野球に明け暮れて過ごした日々は、僕の原点になっています。中学校時代が良い思い出になるよう、いろいろなことに挑戦してほしい。僕も皆さんに良い報告ができるようプロ野球の世界で頑張ります」という文章を寄せた。
さらに、記念事業として横断幕も作成。野球部の福村昊哉(こうや)主将(14)は「日本代表の中継ぎとして頑張ってください。越谷から世界へ羽ばたいてほしい」。顧問の森翔太朗教諭(32)は「越谷の代表として、世界一を目指してほしい」と話す。