越谷市内の中学、高校、特別支援学校の児童生徒たちが31日まで、市内の東武スカイツリーライン4駅に、自殺防止を呼びかける美術作品を展示している。3月は「自殺対策強化月間」で、越谷市保健所こころの健康支援室が東武鉄道や各校の協力を得て実施。アイデアを凝らした立体作品や書道作品が展示されている。自殺者が増える中、関係者は「子どもたちの作品が思いとどまるきっかけになれば」と話している。
作品を制作したのは、県立越ヶ谷高校書道部、市立北陽中学校美術部、県立越谷特別支援学校の3校。計4作品が蒲生駅、越谷駅、北越谷駅、大袋駅の構内に展示されている。
越谷駅の階段近くに展示されているのは、越ヶ谷高校書道部員15人が制作した縦2メートル、横8メートルの大型の書道作品。中央に赤字で「希望」と大書され、右側に「疲れた時は気が許すまで休めばいい 今は傷つき立てなくても 希望はすてず共に進もう」。左側には「先に行かなきゃ見られない景色がある 明日からまた前へ歩きだそう 希望抱いて」と書かれている。
文章は書道部員全員が詩や歌詞を参考に考えた。1年生の冨田妃菜さん(16)は「誰にも嫌なことはある。そんな時は無理しないで休んでという思いを込めた」という。渡沙絵さん(15)は「生きていればいろいろな人に会う。新しい出会いはきっと楽しいこともある。希望は捨てないでという気持ちを表した」と話していた。
改札口に入ると、正面に「希望」の文字が目に入る目立つ作品。同部顧問の畑澤宏和教諭(36)は「生徒たちが考えた力作。多くの方に見てもらえれば」と話していた。蒲生駅にも縦80センチ、横40センチの作品を展示。同部は「書道パフォーマンス」が得意で、「発表の場を求めている」という。
また、北陽中学校美術部員は大袋駅に「TODAY」と題した絵画パネルを展示。越谷特別支援学校児童生徒は北越谷駅に粘土で作った立体作品を展示している。
昨年の自殺者数は2万1584人(警察庁の自殺統計速報値)で、21年の確定値と比べ577人増え、2年ぶりの増加となった。新型コロナ流行前は10年連続で減り、19年に約2万人となったが、コロナ禍で1000人ほど増えたまま高止まりの状況が続いている。
同保健所こころの健康支援室の小野敦郎室長は「作品は心温まるものばかり。市民が自殺を身近な問題として受け止めてもらいたい」と呼びかけている。
書道で自殺予防呼びかけ 越谷の中高生ら、4駅に美術作品など