八潮 方言漢字サミットに90 人
話し言葉に「方言」があるように、特定の地域文化を象徴する「方言漢字」がある。この方言漢字を考え、街づくりに生かそうと、八潮市垳(がけ)の「垳ふれあい会館」で11日、「第5回方言漢字サミットー漢字から生活文化を確認しよう!―」が開かれ、市内外から約90人が参加した。
イベントは市民団体「八潮の地名から学ぶ会」(長谷田忠夫会長)が主催。「垳」という全国で一つしかない地名を生かした街づくりをと、2017年から、コロナ禍で中止となった一昨年を除き、毎年開催。当日の様子はオンラインでも配信し、約50人が視聴した。
「方言漢字」は「方言文字」とも呼ばれ、奈良時代頃から出現したが、明治時代に国語や漢字の標準化に伴い、切り捨てが進んだ。近年になって日本語学者などによって「方言のように地域性を持つ漢字」と定義され、見直されている。
イベントでは、早稲田大学の笹原宏之教授(57)(日本語学専攻)が「『方言漢字事典(来年6月頃に刊行予定)』を編纂(へんさん)して分かったこと」をテーマに基調講演を行った。
笹原教授は「各地で漢字がカスタマイズ(使用者の好みや使いやすさに応じて作り替えること)されてきた伝統と個性、多様性が発見できた。この本を起点にして、『方言漢字』の事実を普及させて関心を高め、地域訓による名付けを維持させたい」とし、「地方の文献資料の探求、実地取材や調査をさらに推進する」と述べた。
続いて京都市にある地名「椥辻(なぎつじ)」や、人名の方言漢字「鸙(ひばり)(宮崎県)」「橳(ぬで)(群馬県)」など、2人が調査報告を行い、最後に同会の昼間良次さん(48)が、建築・土木用語の「斫(はつ)る」(コンクリートなどを削ったり穴を開けたりすること)を紹介した。
来場者らからは、「うかんむりに『神』、その下に『主』と書く文字について教えてほしい」など専門的な質問が出た。この字は「そしじ」と読み、1字で「愛と感謝と調和」を表す文字という。
また、会場では「方言漢字」の書道展も行われ、笹原教授は「芸術分野にまで方言漢字が踏み出せたことは大変意義深い」と喜んでいた。