越谷市南荻島の会社員でラクロス日本代表選手の福島裕樹さん(26)が7月に米・アラバマ州で開催された6人制ラクロス「SIXES(シクシズ)」世界大会に出場し、史上初の銅メダル獲得という快挙を成し遂げた。ポジションはゴール前で相手シュートを阻止する「ゴーリ―」。3位決定戦では好セーブを連発し、勝利に貢献した。来年はワールドカップがあるほか、2028年のロサンゼルス五輪では正式種目になる予定で、福島さんは「五輪出場が夢。活躍してラクロスをメジャーにしたい」と張り切っている。平日はサラリーマン、週末は練習とトレーニングに余念がない。
ラクロスは、直径6㌢のボールを、先端に網のついたステックで奪い合い、180㌢四方のゴールに入れて得点を競うフィールド競技。1チーム10人、15分×4クォーターで行う。女子スポーツのイメージが強いが、男子はハードなボディーアタックが認められ、シュートは時速170㌔にも及び、「地上最速の格闘球」と呼ばれる。
福島さんは越谷市生まれ。小学校から野球を始め、県立春日部高校野球部では捕手や内野手で活躍した。高校の数学教諭を目指して進学した千葉大学教育学部(千葉市)では「新しいスポーツに挑戦したい」と考えていたところ、ラクロス部主将から声を掛けられた。「男子高出身の僕にぴったりの体育会系のノリと雰囲気」がすぐに気に入り入部した。
千葉大は大学リーグ「関東1部」に所属する強豪チーム。常に日本一を目指していた。「千葉大から多くの日本代表選手を輩出していると聞き、自分もなりたいと夢中になった」と福島さん。
身長173㌢、体重84㌔のがっちりした体格と野球での捕手経験を買われ、ゴーリーになった。「実際にやってみると、ゴール前で相手ボールをさばくのと野球の投球を捕球するのは違うようで似ていた。野球の経験が生きた」という。
大学時代は4年生で強化指定選手に選ばれ、日本代表選手となった。大学卒業後は社会人チームで「東日本クラブチームラクロスリーグ戦」第1部で優勝を果たした。現在は社会人クラブチームの「グリズリーズ」に所属し、昨年は同リーグ戦第2部で優勝。今年は同1部に昇格し3位に入賞した。
今年、初めて日本代表選手として世界大会に出場した。予選ラウンド2位で決勝ラウンドに進出。準決勝でアメリカに敗退するも、3位決定戦でイギリスに勝利し、初のメダル獲得となった。「試合時間残り1秒で同点時に、相手シュートをセーブした瞬間は鮮明に覚えている。延長戦となったが、相手に得点を与えなかったことが勝利に結びついた」と振り返る。
福島さんは大学卒業後、ラクロスを続けるため、高校教諭にならずに証券会社の営業マンになった。「コロナで対面営業が出来ず、苦労している」が、週末は母校の千葉大学グラウンドなどでクラブチームのメンバーとともに練習を重ね、後輩たちのコーチも務める。
「まずは来年のワールドカップ出場を目指す。ラクロスは大半の選手が大学から始めるので、スタートラインが同じ。さまざまな出身競技の特性も生かすことができ、誰もが日本代表を目指せる数少ない競技です」と福島さんはラクロスの魅力を語っている。
ラクロス 17世紀、北米先住民族が祭事や鍛錬として行っていたものをフランス系移民が発見し、ルールを定めスポーツ化した。現在の競技人口は70を超える国と地域で計約90万人に上る。昨年、国際ラクロス連盟が国際オリンピック委員会(IOC)に正式加盟し、2028年のロサンゼルス五輪での種目化を目指している。日本では1986年に最初のチームが作られて以来、大学生を中心に拡大。一般社団法人「日本ラクロス協会」には全国で男女約350チーム、約1万4000人が競技登録している。