越谷市が計画している市内初の小中一貫校「蒲生学園」、「川柳学園」の整備計画について、同市は10月25日、開校時期を当初予定より1年遅らせ、2027年4月開校を目指すと発表した。両校の建設と維持管理を託す業者選定の承認議案が9月市議会で否決されたためだ。市では内容を変えて業者選定をやり直し、早ければ年内にも公募を始めるとしているが、否決議案の対象ではなかった「明正学園」も1年遅れで同時開校することになり、大きな影響が出ている。
市は人口急増に対応するため、民間の資金やノウハウを活用する「PFI」方式で、26年度に3つの小中一貫校を開校することを目指してきた。このうち「蒲生学園」「川柳学園」両校の設計・建設と、「蒲生学園」の15年間の維持管理について、提案内容と入札価格を総合的に評価する方法で入札を実施。今年6月、応札した2グループのうち、市内の設備工事会社「ナカノヤ」を中心とするグループが落札したため、承認を求める議案を9月市議会に提出した。市はナカノヤグループの新会社と仮契約を結んでおり、議会の議決後に正式に事業に入る段取りだった。
しかし、業者選定の過程などをめぐり、子ども・教育委員会で疑義が相次ぎ、業者の提案内容を外部の専門家3人で審査した点について議会では「少ない」との指摘が続出。142億円の契約議案が否決される要因となった。
同市によると、今後もPFI方式は維持したうえで、審査会委員の人数を増やして、教育施設の専門家など5人のメンバーが新たに選定作業に当たる。入札価格と性能評価の得点配分も見直す。
市はこうした見直しを経て、年内に2度目の入札手続きを実施。来年9月の市議会で承認を求めたい考えだ。福田晃市長は先月25日の定例記者会見で、「議会側から見てもおかしいと思われないものを、しっかり事前に考えていきたい」と述べた。
開校延期を受け、再編対象の小学校の中には仮設教室の増設やリース延長などで約2億7000万円の負担増が見込まれるところがある。このため関係する地域の児童・生徒の保護者や住民には不安が広がっており、市では11月15日から全11回、説明会を実施する。
PFI 「プライベート・ファイナンス・イニシアチブ」の略。国や地方自治体が学校など公共施設の建設や運営を民間主導で整備・運営することなどでコスト削減やサービス向上を狙う手法。
越谷の小中一貫校が1年遅れ 業者選定やり直しで