三郷市立彦糸中学校(三浦力校長)で9月27日、2年生102人を対象に東日本大震災の教訓を学ぶ授業「災害伝承10年プロジェクト」が行われ、岩手県・陸前高田市立気仙小学校の元校長、菅野祥一郎さん(71)が「形あるものは失っても―故郷は負けない―」をテーマに、震災の様子を話した。
同校は震災後、津波が校舎を襲って来たものの、児童92人全員が助かった。「当時、〝奇跡の小学校〟と報道されたが、それは奇跡や偶然ではなかった」と菅野さんは言う。
菅野さんは、地震後、外出先から通行止めの道を迂回してようやく学校に戻ると、直ちに山への全校避難を決断した。「津波災害のマニュアルにはなかった。判断を誤れば、末代まで非難されることになる」と思いながら、「山に逃げろ」と指示したという。
また、津波で家などが流され人々が泣き叫ぶ生々しい動画を見せ、悲惨な状況を伝えた。そして、「さまざまなことを経験し、本などから知識を得て、日頃から気付き、考え、行動することが大切」と述べ、「津波の恐ろしさはもちろんだが、復興に向けた人間のたくましさや頑張ろうという気持ちに目を向けてもらいたい」と強調した。
学級委員会のメンバー、盛實拍末君(13)は「今まで津波を意識したことはなかったが、改めてその恐ろしさを実感した。大勢の人が実際に亡くなったことが悲しい」と話していた。
同事業は、市町村の災害対応力の強化や、地域住民の防災意識向上のため、東日本大震災の被災地で活動した職員や消防団、自主防災組織などの人々を「語り部」として、講師として派遣する事業で、2014年から実施されている。