無農薬の小麦と大麦の栽培をしている越谷市宮本町の農業、遊佐謙司さん(54)がこのほど、無農薬小麦で作った「越谷黒うどん」(乾麺)と、同じく無農薬の六条大麦で作った「越谷麦茶」の販売を始めた。遊佐さんは同市内唯一の麦農家。うどんは、小麦の外皮を含み、ほんのりと灰色がかっているため「黒うどん」と名付け、麦茶は焙煎した麦の香りが心地よい昔ながらの味。遊佐さんは「越谷に麦栽培を定着させたい」と張り切っている。
47歳で脱サラして専業農家になった遊佐さん。会社員の頃から、野菜作りが趣味だったが、「もっと農業を勉強したい」と栃木県農業大学校に入学し、1年間、農業の基礎を学んだ。インテリアメーカーを退職後、無農薬野菜の栽培に取り組み、「地産地消100%」を目指してきた。
麦作りにも憧れていたが、「市内の農家によると、昔は米と小麦の二毛作が当たり前だったが、最近は米だけという農家が多い」ことを知る。早速、麦栽培が盛んな小川町の農家などで基礎を勉強した。「小川町は有機農業が盛ん。自分も越谷でやってみようと、小麦やライ麦など保存できるものを栽培している農場で修業した」という。
小麦栽培は5年前から準備し、一昨年から栽培をスタート。「一昨年は無農薬のため雑草が多く、うまく収穫できず翌年分の種を取るのが精いっぱい。悔しい思いをして2年目の昨年、ようやく成功した」と話す。
小麦は10㌢ほどに成長する前に踏むと、強く育つため、“麦踏み”が欠かせない。十分に踏みつけないとヒョロッとしたものができてしまうという。
苦心の末に完成させた小麦で作る「越谷黒うどん」は細麺と太麺の2種類。栄養価が高いとされる小麦の表皮「ふすま」を多く使い、栃木県市貝町の製麺業者「黒澤製麺所」(黒澤真治代表)に製麺を依頼し、「黒うどん」と名づけた。また、六条大麦を栽培から脱穀、選別まで自分で行って、ときがわ町の「不二農産加工所」で焙煎してもらった。粒ごとの焙煎のため、麦の優しい味と香りがする。
同市越ヶ谷本町の古民家複合商業施設・はかり屋の中に直営自然食品店「遊佐農場」を経営し、無農薬野菜やオリジナルのドレッシングなどを販売している遊佐さんは、同店で「越谷黒うどん」(細麺・太麺、250㌘、520円)、「越谷麦茶」(500㌘、880円)を限定販売している。また、同市の観光物産拠点施設「ガーヤちゃんの蔵屋敷」(越谷駅東口)でも購入できる(黒うどん594円、越谷麦茶993円)。
遊佐さんは「ネット販売はせず対面販売にこだわりたい。小麦を安定栽培して、ゆくゆくは越谷産クラフトビールを作るなど越谷に麦栽培を定着させ、次世代にも伝えていきたい」と話す。
<問い合わせ>遊佐農場TEL940・5474。