和紙を使った「折形」と呼ばれる伝統文化に、“形状記憶加工”の最新技術を応用し、「細川紙」(小川町特産の和紙、ユネスコ無形文化遺産)の普及を図る試みが、越谷市のプレス会社で始まった。細川紙に折り線をプレスして、誰もが簡単に「ぽち袋」が作れる。特許を取得した形状記憶加工技術で、「折方見本帳ORU-KOTO」が開発され、「東京インターナショナル・ギフトショー」(来月7日から、東京ビッグサイト)に出品される。「海外からの観光客向けの新しい越谷発の土産品に」と関係者は期待をかける。
「折形」は武家社会の礼法の一つ。折った和紙で進物を包む方法や、儀式に使う和紙の飾りを総称する呼称。現在、広く使われている祝儀・不祝儀の包みで金封、祝儀袋、のし袋と呼ばれてものや、千羽鶴など世界に普及している「折紙遊び」は、折形が変形され一般に普及したものとされている。
この日本の伝統文化に独自の技術の光をあてて、新商品を開発したのは、同市増森のプレス会社「中島プレス工業」(小松崎いずみ社長)。
同社は2017年、不織布の形状記憶加工に成功。その技術を生かし、不織布に折り線を入れ、折り紙のように簡単に鳩が作れる「おくり鳩」を開発した。家族などが「おくり鳩」にメッセージを書いて、棺に入れて故人を見送るもの。現在、国内の葬儀社で利用され、年間5万枚を出荷している。
この技術をさらに発展させ、多くの人に伝えようと、同社は県の研究機関の「県産業技術総合センター」のアドバイスを受け、後継者不足や普及が課題となっている「細川紙」の職人らと連携することになった。
両者が提携して誕生したのが、折形の図解と形状記憶加工した細川紙をセットにした「折形見本帳 ORUーKOTO」。形状記憶加工は、プレス機を使って0・002㍉の折り線をつけるもので、熟練の技術が必要。和紙は間違って折ると、シワが残こってしまうため、きれいに折るのが難しい。そこで薄い和紙に折り線(山折り、谷折り)を付け、誰でもきれいに折れるようにしたところがミソだ。
見本帳の折形は、「小物包み」や「ごま塩包み」、「新茶包み」など6種類。価格は3枚セット3400円から5000円。6点セットは10800円。
小松崎社長(55)は「折形という日本の伝統文化を気軽に体験できる。折り線に沿って誰でもきれいに仕上げることができる。県の支援を受け、細川紙とコラボすることで商品価値も向上した。今後、日本みやげとして普及させたい」と張り切っている。
東京インターナショナル・ギフトショーには全国1800社が集まり、新製品を披露する。世界各地からバイヤーたちも来場して販路を探る一大イベント。同社は初めての出品となる。
形状記憶和紙で「ぽち袋」・越谷の「中島プレス工業」