地形の高低差を色の濃淡(グラデーション)で表現し、地域の情報などを満載したユニークな地図帳「埼玉凹凸地図」(A5判、縮尺1万分の1)が、このほど出版された。県内の地形を研究する市民グループ「埼玉スリバチ学会」(吉村忠会長)のメンバーが1年間かけて、実地調査し、古道や古墳、石碑など歴史的遺構をはじめ、土地情報を盛り込んでまとめた。まち歩きの楽しいガイドブックになっている。
凸凹地図は、同学会メンバーが、県内を144地域に分けて、1年間、実地調査し監修した。「スリバチ」は、「窪地」。2004年に「東京スリバチ学会」(皆川典久会長)が発足し、その後各都道府県に学会ができ、埼玉では14年に発足した。
土地の起伏や高低差を可視化すると、通常の地図ではうかがえない、地域の歴史や特徴などが見る――として、凸凹地図が製作された。
例えば、越谷市を見ると、「河畔砂丘」と呼ばれる各砂丘地が示され、標高も記されている。また、旧陸軍越谷飛行場があった地点(小曽川)や軍需工場跡地(元柳田町)など地域の情報が盛りだくさん掲載されている。
また、「まち歩き目線」で作られているため、誰もが利用できる公共施設や公園、社寺に加え、公衆トイレやコンビニ、バス停などの“立ち寄りスポット”がひと目でわかり、史跡巡りなどの参考になる。標高別に低いところから高いところまで、段差を色分けで明確にし、吹き出しを使った文字情報も豊富な斬新な地図となった。
監修に参加した、同学会会員でNPO法人「越谷市郷土研究会」副会長の秦野秀明さん(55)は県内全域をフィールドワークで歩いた。「埼玉は利根川、荒川などの大河川の氾濫で地形ができた。歩くとそれがわかる。中世の供養塔の板碑も埼玉特有のもの。地図を手に歩けば古来の人たちの営みが想像できる」と話す。
同学会の吉村忠会長(52)は「埼玉の地形は、西に関東山地、東に関東平野に広がる。凸凹地図のコンセプトは『血の通った地図』。こだわりを込めてポイントを示したが、過不足があるかも。今後も情報を集め、進化する地図として充実させたい」としている。
作成に協力した同学会メンバーの竹村香都さん(50)(さいたま市)は「平らに見える埼玉も実は台地が多く、歩くと魅力がいっぱい」と言い、同じくメンバーの萩元幹雄さん(53)(同)は「デジタルによる地図作成に熱中している」と話す。
「埼玉凸凹地図」は、カラー162㌻で昭文社刊。価格は2200円。全国の書店で購入できる。同学会は、同地図の解説本の「埼玉スリバチの達人」(A5判、160㌻、昭文社刊)も同時に出版している。
地域が浮かぶ”凸凹地図”・「埼玉スリバチ学会」が監修