越谷市のせんげん台駅東口と同市立病院を結ぶ「ジャパンタローズ」(松伏町)運営の路線バス(延長約8・4㌔)が2018年7月以来、休止している問題で、住民でつくる「せんげん台駅|市立病院バスの再開を願う会」は4月23日、同市桜井交流館(同市大泊)で「路線再開を考える懇談会」を開催した。地元の住民約50人と越谷市側から都市計画課職員2人が出席して、市側から現状の説明があった。住民側から「市がバス会社に財政支援して復活を」の問いに対し、市側は「バス会社とは再開に向けた協議は継続している」とした。一方、バス会社側は「新型コロナウイルスによる影響で、既存の路線バスの利用者が激減し、休止路線の再開を検討することは困難」と深刻な状況になっている。
「休止」となっている路線バスは、住民や市側の要望で、2011年4月に運行開始した。市北部から初の市立病院への直通バスで、多くの利用が期待されたが、当初から利用は伸び悩んだ。12年は1日20便、1日当たりの利用者は178人。14年は1日44便に増やし、1日当たり344人まで伸びたが、16年には同256人に落ち込んだ(同市都市計画課)。
このため、「ジャパンタローズ」は18年2月、国土交通省関東運輸局に同路線の休止を届け出、同7月からストップしている。住民側は19年1月に「何とか復活を」と約6300人の署名を集めて、当時の高橋努市長に要望書を提出している。
今回開かれた「懇談会」で住民から「近隣市はバス会社に財政支援している。なぜ越谷はできないのか」や「国からの補助制度も各種あるはず。なぜ利用しないのか」などの質問が相次いだ。これに対し、越谷市都市計画課の担当者から「個別の財政支援は財政的な面からも困難。公共交通計画を作成して取り組み、協議は継続している」、「国の補助制度は複数の自治体を走る路線が対象。同路線バスには適用は難しい」と答えた。
「懇談会」を終え、同会代表の一人、土屋徹さん(67)は「多くの市民が病院への足を失い、困っている。市北部は南部、中央部に比べて地域格差がある。経営上の理由に対し、越谷市が率先して対応すべき。市民の足を確保するのは行政の責務だ」と訴えた。
タローズバスを運行する「ジャパンタローズ」側は以前、「①1日平均400人の乗客確保②運賃の改正③平日のみの運行(土日は休み)④運転手の確保――の条件さえそろえば復活させたい」としていた。
「ジャパンタローズ」の和佐見文男社長(60)は「新型コロナウイルスによる外出自粛やテレワークの普及などで、乗客が激減し経営が悪化している。今後もバス利用者の回復が不透明なことから、休止路線の再開を検討することが難しい状況」と話す。
一方、同市都市整備部の田中祐行・副部長は「今後も、バス事業者との協議を継続し、地域との協働に向けた新たな公共交通の導入に向けた取り組みをし、利便性が高く持続可能な交通ネットワークの形成を図っていく」と話す。
同市は19年度から、次世代モビリティ(移動手段)導入を検討する「新たなモビリティサービスによるまちづくり協議会」(さいたま市など6市1町で構成)の構成市として、「パーソナルモビリティ(超小型モビリティ)」や「自動走行バス」などの取り組みに参画している。