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視覚障害者に”光の家”・越谷市に県内初の就労施設

 越谷市のNPO法人「視覚障がい者支援協会・ひかりの森」(松田和子理事長)はこのほど、視覚障害者のための就労継続支援B型事業所「ひかりの森」(同市赤山本町)を開設した。4日、落成式が行われたが、視覚障害者の就労支援事業所は県内初で全国的にも珍しいという。施設内はバリアフリーを徹底し、特に室内を安全に移動できるように、弱視の人向けに床を色分けし、足の感覚で区分がわかるような配慮もされている。「ひかりの森」は今後、「点字付き名刺」の製作をメイン業務として、地域での「新たな仕事」にもチャレンジする。関係者は「全国のモデルになる事業所にしたい」と期待をかける。
 「就労継続支援B型」は、障害者が一般企業への就職が困難な場合、雇用契約を結ばずに軽作業などの就労訓練を行う福祉サービス。雇用契約を結ばないため、賃金ではなく「工賃」として成果報酬が支払われる。
 住宅街に建てられた同事業所は木造2階建て、延床面積は約205平方㍍。玄関は自動ドアで外からの誘導用にスロープや点字ブロックが設置され、屋内エレベーターもある。バリアフリーはもちろん、床の材質を工夫し、色分けしてコントラストを付けて、動線を明瞭にするユニバーサルデザインの建物になっている。
 1階はメインの2つの「作業室」(約53平方㍍と12平方㍍)。2階はフリースペースや事務室、相談室、キッチンなど。フリースペースでは展示やミニイベントもできて、多目的トイレを備えた。
 松田理事長(77)は落成式で、「目が不自由になると、働く場がなくなる。自分たちの力で働く事業所は長年の夢。2年前、プロジェクトチームを立ち上げ、ようやく完成した。この事業所で人づくり、ものづくりで地域に貢献したい」とあいさつした。
 同理事長は21歳で網膜色素変性症のため弱視になり、50代の時、工事現場に転落し全盲に。自殺も考えたが、本の読み聞かせなどをしてくれた周囲の支援で立ち直った。2005年、「福祉施設 ひかりの森」を設立し、10年にNPO法人を立ち上げ、「地域活動支援センターひかりの森」として、中途視覚障害者への歩行訓練や音声パソコン、点字講習などを実施する一方、点字付き名刺の製作、施設開放日「フレンズディ」などの活動を続けている。
 「ひかりの森」は当面、「点字付き名刺」の製作をメインにし、地域での「新たな仕事」にもチャレンジし、視覚障害者の自立を促す。松田理事長は「困っている人を見かけたら、迷わずに声をかけてほしい。その一声が私たちの命を守ってくれる」と呼びかけている。また、越谷市障害福祉課の山崎健晴課長は「ひかりの森は、歩行訓練や日常生活訓練、音声パソコンや点字講習などさまざまな活動を展開している。今回の事業で、多くの利用者の社会参加が図られるだろう」と期待している。