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独自の「共同受任」10年目・越谷市の「市民後見人」制度

 認知症などで判断能力が不十分な人の財産管理などを支援する成年後見制度。越谷市は成年後見事業を同市社会福祉協議会に委託。県内で唯一、市民後見人が社会福祉協議会とタッグを組んで被後見人を支援する「共同受任(複数後見)」制度を導入した。スタートして10年。2月16日には「第4期研修」が修了し、新たに23人の市民後見人候補が誕生した。同市社会福祉協議会設立の「成年後見センターこしがや」を中心に活動するが、コロナ禍で被後見人との意思疎通が難しい中、「緊急手術など医療行為への判断や意思決定は親族の同意が必要」といった課題も改めて浮き彫りになっている。

 成年後見制度は、認知症や障害などで判断能力が不十分な人の財産管理や介護に伴う契約などを第三者が支援する制度。同市は被後見人1人に対し、「市民後見人」1人と同市社協が連携する「共同受任」を取り入れている。高齢化が進み、地域で支える仕組みづくりを狙っている。

 2013年度、第1期の「養成研修」を始めた。当初は25歳以上68歳以下が条件だったが、4期目の今年度は「20歳以上」として上限を外した。受講料はテキスト代や実費だけ。基礎が3日間6時間、実践が8日間41時間。弁護士や司法書士らが、高齢者や障害者、認知症、生活保護者への対応など指導した。

 修了者には研修を重ね、受任の意向を確認した後、家庭裁判所への申し立てを経て活動が始まる。これまでに登録した市民後見人候補者は33人。実際の「受任者」は17人だ。

 18年から市民後見人をしている加藤節子さん(68)は「親族でないメリットは客観的に関われること。相談できる機関がしっかりしているので安心して活動できる」と話す。加藤さんは、急病の被後見人を救急車で搬送した際、医師から「手術には親族の同意が必要」と言われ、急きょ、被後見人の兄弟を探した経験がある。「被後見人の身体の状況や親族への連絡先など明確にしておく必要がある」と痛感した。

 同じ市民後見人の荒井五郎さん(71)は「実際に被後見人と向き合うと、ハードルはそう高くないことがわかった」と話している。

 2月16日の第4期研修を終えたケアマネージャー、寺垣内明美さん(51)は「成年後見は身近な問題。専門家から最新情報を知ることができた。受任したら専門職の方と連携していきたい」と話す。

 修了者は、「市民後見人候補者」として名簿登録。市民後見人の需要があった際、「成年後見センターこしがや」が適任者を選出し受任の依頼をする。

 市民後見人の活動は、1人で被後見人の家や施設を訪問し、家族や健康状況を聞くなどの「見守り活動」が中心。金銭や不動産などの管理は同市社協職員が対応する。

 「成年後見センターこしがや」の佐藤久恵所長は「市民後見人は、『身近な地域の後見人』。市民後見人が安心して活動できるよう市と連携して支援していきたい」と話す。共同受任は課題も多いが、同市地域包括ケア課の鈴木研司課長は「市民後見人が孤立せず、安心して効果的な後見業務を行えると考えている」としている。