プロジェクトの打ち合わせをする、NPOうるおい工房村の吉田理事長(中央)ら 野菜作りをする畑
野菜を育てて、子どもたちにいっぱい食べてもらおう―高齢者中心のこんなユニークなプロジェクトが新年早々、草加市でスタートする。同市社会福祉協議会が、市内のNPO法人と協力して実施する試み。高齢者らのボランティアが、季節ごとの野菜を栽培し、子ども食堂やフードパントリー(食料の無料配布拠点)に提供する。名づけて「野菜で子どもを育て隊!」。今月7日までボランティア(定員20人)を募集中で、同12日に野菜作りを学ぶ勉強会を開く。高齢者の生きがいづくりや地域・世代間交流、食育やフードロス解消と目配りの利いた栄養価満点(!)のプロジェクトだ。
子ども食堂や困窮家庭支援のフードパントリーが広がるなか、同市社会福祉協議会(乕渓=とらたに=文有会長)には、「市民農園で作った野菜を寄付したい」などの申し出があるが、〝生鮮食材〟とあって提供方法の問題などで受け入れできないケースが多かった。
一方、子ども食堂関係者らからは、「お米は多く集まるけれど、野菜が少ない」という声があった。
この〝ミスマッチ〟を何とかしたい―。同社協の生活支援コーディネーターの白河部りつ子さんは、「野菜を作って直接提供できたら」と、復興のヒマワリ栽培などをしている、同市内のNPO法人「うるおい工房村」(吉田光明理事長)に協力を求めると快諾。市から管理を委託されている農地(横2㍍×縦27㍍、市内栄町)の活用を提案、プロジェクトが誕生した。
早速、吉田理事長(77)らが、各方面に協力を呼びかけると、同市町会連合会が中古の農機具を集めてくれ、知人の農家が野菜作りを指導することになった。
白河部さんは「高齢者も子育て世代も、共に地域で支え合いができれば」と話し、「女性に比べて少ない男性ボランティアを増やす機会に」と期待する。
1月12日の勉強会の後、2月中に土づくり、3月頃からグループ分けして、種まきや苗植え、水や肥料やり、草取りなどを行う計画。春には小松菜やジャガイモ、夏はトマト、キュウリ、ナス、秋は白菜、キャベツ、冬はインゲン豆など栽培していく。
同社協は今後、市民団体「草加子ども応援ネットワークPine(パイン)」(浜薗浩美代表、市内の子ども食堂8か所、フードパントリー2か所などが加盟)と連携して、収穫された野菜をリアルタイムで分配するシステムを構築し、食材を無駄にしないための知恵を絞る。
市内21小学校区に1つずつ子ども食堂の開設を目指している「Pine」の浜薗代表(52)は、「子ども食堂やフードパントリーへの安心安全な食材の安定供給源として、とてもありがたい」と、今回のプロジェクトを歓迎する。
子ども食堂からは、「子どもたちと野菜作りに参加したい」との声が出て、障害福祉サービス事業所からも参加希望が届いている。
吉田理事長(77)らは、「季節ごとに、子どもたちと収穫祭などを開けば地域交流につながり、食育にもなる」と話し、同社協も、「ここをモデルに将来は市内全域に食材提供の輪を広げたい」と夢を膨らませる。