名作一堂に鈴木喜美子展 来月、さいたま市で
長年にわたり栃木県の足尾銅山を描き続けてきた草加市の画家、鈴木喜美子さん(81)の作品展「足尾―風土円環 鈴木喜美子展」が来年1月14~19日、県立近代美術館(さいたま市浦和区)で開かれる。
栃木の記念館 油彩画83点収蔵予定
来年5月、栃木県日光市足尾町に開館予定の「足尾銅山記念館」に、鈴木さんが昨年までに制作した300号の大作を含む油彩画83点が収められるのを記念したもので、鈴木さんの作品を一堂に集めた県内での展示は今回が最後となる。
同展は午前10時から午後5時まで。入場無料。1月17日午後2時から、美術評論家の瀧悌三さん、新制作協会会員の松浦安弘さんとの鼎談も行われる。
鈴木さんが足尾と出会ったのは1978年夏。絵画教室の生徒とスケッチに訪れた際、閉山した銅山があると知り立ち寄ったところ、夕日に照らされた山と工場が迫り、言葉にならない衝撃を受けたという。
それから約半世紀、文献や資料を調べては足尾に通い続け、移り変わる風景を描き続けてきた。「当時、両親を相次いで亡くし、追い詰められていた精神状態と、廃墟と荒涼とした山肌の景色が重なった」と振り返る。
制作に対する真摯な姿勢が住民たちに受け入れられ、銅山の経営企業から敷地内への立ち入りを許されるまでになった。時にはヘリコプターに乗り込んで上空から眺めるなど、足尾の風景と向かい合い続けた。時間の経過とともに、かつて描いた建物は姿を消して巨大な煙突だけが残り、山々には植樹で緑がよみがえってきた。
「私も年を取るし、自然や風景も年々変化する」と強調。大野知事から「歴史と変わりゆく姿を作品を通して世に広める活動に深く敬意を表する」との言葉を受けたものの、「まだ完璧な足尾は描けていない。生きている限り足尾と向き合いたい」と鈴木さんは話している。
<問い合わせ>ミュゼ環・鈴木喜美子記念館の鈴木さん☎960・0388
【足尾銅山】明治時代に国内一の産出量を誇った銅山。採掘の際に発生した化学物質が渡良瀬川に流れ込み、魚の大量死や流域の農作物被害など、周辺地域に深刻な大気・水質汚染被害を引き起こしたことで、1973年に採鉱を停止し、閉山した。「足尾鉱毒事件」は日本最初の公害として知られている。 |