市がものつくり大学と協定
草加市は、橋梁技術の第一人者がいる「ものつくり大学」(國分泰雄学長、本部・行田市)と協定を結び、市内に残る4本の木橋の修繕を進める。市にとっては老朽化が進む木橋の延命を低予算で行えるメリットがある一方、修繕に当たる学生にとっては実物で橋の補修方法を学べる機会となり、双方の思惑が一致した形だ。市ではこれを機に学生に草加のことを知ってもらい、「土木技術者が少ない市の職員として卒業生に入庁してほしい」と、結びつきを一層強めていきたい考えだ。
予算の縮減、学びの場に
草加市内の河川や用水路などに架かる橋は約250か所あるが、そのうち市が管理する木橋は、中根2丁目地内、谷古田用水の「無名橋88」、青柳6丁目地内、八条用水の「無名橋」、青柳2丁目地内、葛西用水の「なかよし橋」と「ふれあい橋」の4つ。いずれも歩行者、自転車専用だが、供用開始から20~30年たち、老朽化が進んでいる。これらの橋を修繕しつつ、予算の縮減に努めようと、市はものつくり大学と「木橋リノベーション事業に関する基本協定」を締結した。
同大技能工芸学部長で建設学科教授の大垣賀津雄博士は、東京・お台場の「レインボーブリッジ」の設計・施工や首都高速「かつしかハープ橋」の振動実験などを行った土木橋梁の構造設計者。もともと草加市は大垣教授に、橋梁修繕工事の技術相談を行ってきた。その中で木橋の案件を取り上げた際、大垣教授から「木橋は減っており、学生たちにとっても実習の機会は少ない。木橋を知るよい機会で、地域貢献にもつながる」として、学生が補修に取り組むことを提案。同市も同意し、今回の「木橋リノベーション事業」につながった。
補修は大垣教授の指導の下、学生10人が実施する。木橋は年度ごとに一つずつ補修する予定で、最も古い「無名橋88」から取りかかる。
学生たちは昨年11月頃、現場を視察した。大きさは3メートル四方で、材質は杉。元の形を極力残しながら、雨などで腐食した部分を取り除き、欄干部分は木質の繊維強化プラスチック(FRP)、足場となる床材はさらに強化剤にガラス繊維を用いた繊維強化プラスチックのGRP(GFRP)などで補修する方針。今年8、9月頃に大学に運び入れ、分解して補修する。大垣教授は「ガラス繊維強化プラスチックを補修で使うのは初めて。研究要素として取り組む」という。2031年度末までには4橋全ての補修完了を目指す。
5月23日に同市役所で行われた同協定の締結式で、國分学長は「大学の力を市政にどう生かせるかを示すよい機会」と強調。山川百合子市長は「予算縮減にもつながり、大変ありがたい。学生らに草加市を知ってもらうきっかけにつながれば」と話していた。