助け合いの統合教育学ぶ 体験者語る集いに30人
健常者と障害者が寮で共同生活をしながら共に学んでいるデンマークの成人学校を紹介する集いが19日、越谷市役所エントランス棟多目的ホールで行われた。その一つに留学した橋本育実さん(34)と髙木沙祐里さん(26)が、「過ごしてみて知ったエグモント・ホイスコーレンのはなし」と題して体験談を語った。主催した「インクルーシブ教育を考える会」代表の福田直実さん(37)が司会を務め、30人が集まった。
2人が留学したエグモント校は、「フォルケ・ホイスコーレ」と呼ばれる全寮制の成人学校の一つ。約220人の生徒のうち6割が健常者、4割が何らかの障害を持っている。1970年から障害者には健常者がヘルパーとしてつき、障害者が自分の介護に合った学生にお金を払って雇うシステムが作られ、統合教育を開始した。寮や学校では、障害の有無に関わらず、みんなが助け合い、共に暮らし学んでいる。
橋本さんは、おいが「ドラベ症候群」という難治性てんかんを患っていることから、半年間留学した。「いい点は同世代が介助する環境。日本のように介助者が高齢者でなく、同世代だから話も合うし、楽しい時間を過ごせる」と言う。生活は「障害者に雇われているから、彼らをボスと呼ぶんです」。パーティーでは障害の有無に関係なく盛り上がり、ダウン症の人が筋トレをして筋肉隆々になったことなど、統合教育の良さを話した。
一方、髙木さんは10歳の時に筋ジストロフィーと診断され、現在、電動車いすユーザー。「私立高校にいたので周りに介助を頼めなかった。エグモントのように小さい頃から(健常者と障害者が)一緒にいる時間を増やせば、自然な形で過ごせる」と話し、インクルーシブという言葉をなくすことが必要だと強調した。その後、参加者が意見交換を行った。
文教大学学習ボランティア部の山下慶さん(20)は、「デンマークと日本でこの差を生んでいるのは何なのか。エグモントでは雇用関係が成り立ち、互いにリスペクトするのがいい」と話す。ドラベ症候群の子どもを持つ学校教諭は「10年前と比べると、障害意識が高くなってきている。今、息子は5歳。小、中学校で変わってくれば、子どもが世の中に出た時、(障害が)当たり前の社会になるのでは」と夫婦で熱心に聞き入っていた。
「インクルーシブ教育を考える会」は、難病の子どもを抱える福田さんが2022年5月に設立した。「インクルーシブな教育現場とはどういうものか。そうでない現況を知ってもらいたい。同じ思いを持った人とつながりたい」と話していた。