断られた修理 練習道具見事に再生 極真会館が感謝
空手道場が壊れた練習用ミットやサンドバッグの修理をことごとく断られ、本来、修理の専門家ではない草加革職人にダメ元で依頼したところ、見事、修理してくれた。道場では「草加革職人に押お忍す!」と感謝している。
この道場は、草加市高砂1丁目の国際空手道連盟極真会館(松井章奎館長)草加道場。毎日、練習にやってくる子どもたちの大きな声が響いている。だが、10年以上使用していたキックミット、ビッグミット、サンドバッグの持ち手部分が切れて、蹴りや突きを思い切り打ち込めない状態に。同道場の指導員・瀬戸哲男さん(50)が仕入先や縫製会社など修理を頼んだが、ことごとく断られた。瀬戸さんは困り果てた末、昨年11月、同市内で開かれた「草加商工会議所まつり」で、わらにもすがる思いで、草加革職人のブースに入り、小曾根進さん(72)に修理を頼みこんだ。
「面白そうだからやってみよう」と受けた小曾根さんだったが、「意外と苦労した」と言う。ミットはすべてビニール製で冬場は硬くなるため、暖房で温めて縫いやすいようにした。持ち手のひもを直すため、中の綿を全部出して、持ち手をミシンで縫い付け、綿を再び戻した。持ち手を頑丈に縫い付けるためミシンを何度も往復させ、裏に革を当てて強度を上げた。ひもをつなぐ金具は浅草や蔵前の専門店まで仕入れに行った。修理期間はビッグミットで4~5日。糸のほつれなど全体的に直すために予想以上に時間がかかった。「大変だったけど、子どもたちの笑顔がうれしい。仕事の幅も広がる」と小曾根さん。草加革職人のこだわりと技が、ミットに再び命を吹き込んだ。
瀬戸さんは「本当に助かりました。これで思い切り蹴りが打ち込め、子どもたちの練習になる」と話す。今後は同会館の三郷道場や浅草道場の練習ミットやサンドバッグの修理も依頼する。草加と三郷の道場は各100人ほど、浅草の道場は約300人の練習生を抱え、ミットなどの消耗が激しい。「今後ともよろしくお願いします」。道場生らは小曽根さんに深々と頭を下げていた。