身近な声かけが孤立防ぐ 負担軽減へ早期介入訴え
深刻さを増している「ヤングケアラー」の問題に理解を深め、支援の拡大につなげようというセミナーが「県ケアラー月間」の先月、越谷市内で開かれた。ヤングケアラーとは、本来、大人が担うべき家族の世話や家事を日常的に行っている子どものこと。セミナーでは、ケアラーが一人で抱え込み追い詰められないよう、声かけや負担軽減のための支援などの必要性が指摘された。セミナーにはネットを含め60人以上が参加し、関心の高さをうかがわせた。
「ヤングケアラーセミナー~安心で豊かな社会の実現に向けて~」は埼玉りそな銀行が主催し、同市千間台西のせんげん台支店3階にある「りそなYOUTH BASE(ユース・ベース)」で行われた。
セミナーでは、元ヤングケアラーで、草加市内で「ケアカフェ碧空(りく)」を運営している野口由樹さんが、ケアラーが抱える悩みや望ましい支援のあり方などを話した。
野口さんは両親、祖母、弟妹との6人家族だったが、高2の時、祖母が認知症を発症。以後10年間、祖母を介護した。その際、「ほかの人はなぜ手伝ってくれないの?」といら立ちを家族にぶつけることも。事情を誰にも打ち明けられず、食事が喉を通らなくなり、部屋に引きこもった。祖母が他界すると今度は自分の役割がなくなり、喪失感にさいなまれた。
その経験を生かして、昨年8月、ケアラーのためのカフェをオープンした。「子どもの居場所を探す。子どもの頃の体験は大人になっても消えない。子どもの時に心から楽しいと思える時間を増やすために、大人は何ができるかを考えたい」と話した。
カフェは毎月第2水曜午後9時~10時30分、オンラインで開催。内容は参加者の体験談リレートークとおしゃべりタイム。それ以外も都合がつく時は個別に相談を受けている。
厚生労働省の調査によると、中学2年生の14人に1人、高校2年生の24人に1人がヤングケアラー。ケアにかかる時間は中2で平日平均4時間にも上る。内容は食事・掃除・洗濯などの家事、きょうだいの世話、感情面のケアなどだ。
県社会福祉協議会のヤングケアラー支援コーディネーター、大島聡志さんは、大きな問題は「手伝いをする・しないを選べないこと」と指摘。ケアラーが追い込まれて命にかかわるケースもあるため、地域や企業もアンテナを張り、「学校に行っているはずの時間に子どもを見かけたら、ヤングケアラーかもと考え声かけを」と呼びかけた。支援内容として相談・見守り、負担軽減のための支え、早期介入などを挙げた。
また、県福祉部地域包括ケア課の小南大樹主幹は、ヤングケアラーハンドブックを小4~高3と教員に配布し、ケアラーを支える人材の育成も行っていることなどを伝えた。
参加した50代女性は「経験者の話を聞いたことがなかった。これからは積極的に関わりたい」と話した。同銀行の小嶋啓夫・埼玉東地域営業本部長は「自分たちに何ができるかを知ってもらえれば」と話している。
<問い合わせ>ケアカフェ碧空・メールcarecafe.riku@gmail.com。