草加市立中央図書館の3階に、高校の図書委員がお薦めする「推し本」コーナーが設けられている。読書離れが進む中高生世代に何とか本に親しむきっかけを作りたいと、同図書館が市内の県立高校4校に持ちかけてスタートしたコラボ企画。トップバッターを務める草加高校の生徒たちは、感動したり面白かったりした本を厳選。興味をそそるPOPをつけて、手に取りたくなるようにディスプレーした。同図書館では中高生の読書が少しでも広がればと期待している。
中高生世代の不読率 同図書館が今年5~6月に市内の小学3、5年生、中学2年生、高校2年生を対象に行ったアンケート調査によると、1か月間、本を全く読まない「不読率」は23%で、6年前より8ポイント上昇した。このうち中学2年生は22%で5ポイント増だったが、高校2年生は58%で22ポイントも上昇した。部活動や習い事などで忙しくなることが原因の一つと見られている。
同世代に読書の魅力を
「もし、高校生限定のSNSがあったら何をしますか」「身体なんかどうなってもいい。ずっと一緒にいたいんだ❢」「その場所は何処にも属さない‼」――推し本コーナーにはこんな言葉が並ぶ。図書委員が熱い思いをつづったものだ。
同校のテーマは「100年後の未来に届けたい本」。相性の良い人を自動でマッチングする機能を持つ高校生専用の必須アプリ「オルタネート」を通して動く男女3人の出会いや葛藤、挫折などの人生を描いた物語「オルタネート」(加藤シゲアキ著、新潮社)や、2060年を舞台に、人型ロボットを使った国家的極秘プロジェクトが進む中、そのロボットに恋をした女性と、その女性に思いを寄せるロボットの操縦者との恋愛小説「僕はロボットごしの君に恋をする」(山田悠介著、河出書房新社)など17冊を厳選した。
「100年後の世界の人が、今の生活や未来への希望などの様子を振り返った時に、どういう時代だったかを知ることができる本を選んだ」という。
展示開始前日、副委員長の吉田麻莉さん(17)や、小林愛梨さん(同)、蟹澤咲希さん(16)ら図書委員3人が、面展台に本を陳列したり、POPや電飾を付けたりして準備した。
吉田さんは「高校の取り組みを多くの人に知ってもらいたい」と話し、同校図書館司書の横山史江さんは「同世代だけでなく、多くの市民の読書活動が進むとうれしい」と笑顔を見せた。
この企画には、ほかに草加東、草加西、草加南の各高校が参加。3か月ごとに各校の図書委員がテーマを決めて、順番で本を展示する。
中央図書館は2018年から「草加市子ども読書活動推進計画」に基づき、読書活動を展開。昨年度は「子供の読書活動優秀実践図書館」として文部科学大臣表彰を受けた。だが一方で、まったく本を読まない中高生世代が増えており、同世代が本の楽しさをアピールする企画を各校に持ちかけていた。
同図書館の鈴木智美館長は「高校生の『推し本』やさまざまなアイデアが中高生世代の読書のきっかけにつながれば」と期待している。
<草加市中央図書館> 東武スカイツリーライン獨協大学前駅徒歩1分。一般室の開館時間は、月・水~土曜午前9時~午後8時、日祝午前9時~午後5時。休館日は火曜(祝日の場合は開館)、年末年始、館内整理期間(年間10日以内)。☎946・3000。