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雪景色描く技法で"特許" 越谷の高野画伯

芸術分野でまれ 圧倒的な表現力で認定

作品の前で特許証を手にする高野画伯
作品の前で特許証を手にする高野画伯


 越谷市宮本町のプロの油絵画家、高野元孝さん(83)が今年、絵画の技法で特許を取得した。北国の極寒の冬景色を圧倒的な力強い筆致で描き続け、米ニューヨークでの5回を含め250回以上もの個展を開いてきた高野さんの絵には、雪が降りしきる表現が多い。それを表現する際、絵筆を弾いて絵の具を飛ばす技法が、世界で初めてと認定された。美術の分野で特許は極めて珍しいという。
 高野さんのアトリエには、書き上げたばかりの北国の風景画が並ぶ。弘前城の門、駅構内を除雪する鉄道員、海辺の村落、リンゴ園……いずれも雪が降り積もる。ペインティングナイフで絵の具を盛り上げた積雪とはまた別の表現方法で、降りしきる雪が細かく描かれている。
 「この技法が特許と認められたんです」と高野さんは目を細める。
 高野さんが制作する様子を見た知人が「それは珍しい。特許を取れるんじゃないの」と言ったのがきっかけだった。「技法に特許なんてあるのか?」。半信半疑ながら特許庁に電話すると、書類を送ってくれと言われた。
 それからが大変だった。筆の毛束の素材や長さ、絵の具やオイルの配合割合、筆とキャンバスとの位置関係や距離などを、弁理士が一つずつ正確に記録し、映像も撮って提出した。出願するだけで費用が100万円ぐらいかかると言われたが、賭けてみることにした。
 特許庁では日本や欧米などですでに特許として登録されていないか精査したと見られる。その結果、3月20日登録で特許庁から「特許証」が届いた。特許番号が記され、「発明の名称」は「油絵の制作方法」となっている。
 日本画家・洋画家の標準発表価格の一覧を記した「美術市場」では現在、号30万円の値段がつく高野さんだが、「特許を取った絵として、来年1月の改訂で大きく値上がりしそうだ」と笑う。すでに高すぎて買える人が限られているからだ。それでも「私の夢は日本一、世界一になること」と意に介さない。
 毎年、各地で大規模な個展を開いており、今年は11月に長野市で開く。特許の技法を駆使した作品をまとまって見られる機会となりそうだ。

 高野さんは東京・日暮里生まれ。20代で独学で油彩を描き始めた。北国を描くようになったのは石川さゆりの大ヒット曲「津軽海峡・冬景色」に触発されたのがきっかけ。1983年に日仏現代美術展洋画部で一席を受賞。翌年は無審査となり、4回連続入選。日本風景美展でも優秀賞、審査員賞などを受賞。2002年から15年までニューヨークで5回にわたり個展を開いたほか、各地で毎年大規模な個展を開いている。日本美術家連盟会員。