発見次第、すぐに駆除
桜並木を守るため、特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」の早期駆除を――長年、自然保護運動に取り組んできた草加市旭町の加納正行さん(88)が各地で被害防止のための啓発活動を続けている。先月27日には同市の青柳公園で2団体に講習を行い、駆除方法などを指導した。7月は全国で幼虫の活動が活発化し、被害が拡大する時期。加納さんは「被害を食い止めるためには、早期発見・早期駆除が大切」と、市民の力で草加の桜並木を守るよう呼びかけている。
<クビアカツヤカミキリ> 中国などアジア東部に広く分布する昆虫。成虫は体調約2・5㌢~4㌢。全体的に光沢のある黒色で、首の部分(前胸部)が赤い。発生時期は5月初旬から8月頃。羽化してすぐ交尾し、樹木に300個ほどの卵を産みつける。孵化した幼虫は桜や桃、梅などバラ科の樹木に入り込み、2、3年かけて成長する過程で、木の内部を食い荒らす。食害に遭った木は衰弱し、いずれ枯死する。
県生態系保護協会 加納さん啓発 「外来カミキリの食害で枯死、倒木の危険性」
クビアカツヤカミキリは、中国などに生息するカミキリムシの一種。日本では2012年、愛知県で初めて発見。翌年7月、草加市稲荷の葛西用水にある桜並木で、国内2例目が確認された。桜などの木を食害する害虫として、環境省は18年、「特定外来生物」に指定した。
加納さんは県生態系保護協会副会長で、今年3月までは同協会の草加・八潮支部長をも務めた。これまでに生態や防除法を冊子にまとめるなど、クビアカツヤカミキリに詳しい。
この日、講習を受けたのは、「葛西用水美化促進協議会」(深井孝之会長)と「青柳ふれあいの道緑化推進会議」(高野昭一会長)。公園内でネットを張った樹木やまだ張っていない樹木を見て回り、幼虫が内部を食い荒らす際に排出する「フラス」(ふんや木くずが混じったもの)や成虫の有無を確認した。成虫を見つけると直ちに駆除した。
こうした講演会や、同市みどり公園課職員との連携の結果、一昨年には市内43か所で851匹の成虫を駆除。昨年度は26か所で440匹を駆除した。同課の生亀勝課長は「加納さんの協力を得て、最初に発見された葛西用水などを中心に、桜などを定期的に見回っている」という。
フラスを調べ、幼虫の掘り取り、伐倒駆除や薬剤注入を行う。成虫の活動期にはネット設置や捕殺のほか、住民の安全のため倒木の可能性がある木は伐採している。
しかし、最近では私有地での被害が増加。加納さんによると、21年に駆除した成虫851匹のうち、52%が公用地、48%が私有地での駆除だった。
企業や個人宅、大学、幼稚園などの私有地への立ち入りには許可が必要なため、見回り回数が少ないのが現状という。施設以外でも、材木置き場などでは知らない間に被害が出る恐れがある。「成虫やフラスを見かけたら、駆除するか、同課に通報してほしいが、まず周知徹底が今後の課題」としている。
また、対策として防虫ネットを張っても、発見次第すぐに駆除しないと、ネットを食い破って脱走することも多い。また、ネット内で交尾・産卵し、状況が悪化する場合もあるという。
こうしたことを踏まえ、加納さんや生亀課長は、「誰かがやってくれるでははなく、自分たちで守ろうと考えてほしい」と強調。通報をする場合、「樹木番号を伝えるか、番号がないものはその木を特定できる具体的な場所を伝えて。最初は木の根元に巣食う。散歩がてら足元を見てもらえれば」と話している。
<問い合わせ>草加市みどり公園課☎922・0151。