救護、給水…役割を確認 町会未加入者が課題
三郷市泉地区で18日、泉町会自主防災会による本格的な防災訓練が行われ、住民100人近くが救護所や炊事設備、簡易トイレの設営などを体験した。同市は自主防災組織整備の先進地として知られる。県東部は今月初め、台風接近に伴う大雨被害に見舞われ、泉地区でも避難所が開設されたばかり。タイムリーな実施となり、住民たちはいざという時に自分たちの身を守るため、各自の役割を再確認するなど真剣な表情で訓練に取り組んでいた。
泉町会(秋本満智子会長)は加入512世帯。もとは大部分が田畑で、住宅は約30軒しかなかったが、約18年前の区画整理後、戸建てが立ち並び、移り住んだ「新住民」が多数派を占める。
訓練は、地元で美容院を経営する川和勝好隊長(58)率いる自主防災会(メンバー6人)が計画を立案。「毎年のように地震や水害などがある中、住民に防災に役立つ知識を伝え、いざという時どうすればいいかを再確認してもらう」(川和隊長)ために行った。
午前10時、月の郷公園に集合した住民は、「救護」「給食給水」「情報」「避難誘導」「消火防犯」の5班に分かれて、すぐ近くの町会防災倉庫からテントやいす、調理場として使用するバーベキューコンロ、簡易トイレなどを運んで組み立てた。訓練のため設営は一部だけだったが、「本番ではブルーシートを敷いた上にテントを張り、いすを並べて救護所とする」、「給食給水班は浄水場からポリバケツで水を運ぶのが任務」「避難誘導班は、公園隣の市立北中学校が避難所になるので、そこへの避難を呼びかけて」などと説明があり、住民は自らの安全を確保した上で取り組むべき役割を確認していた。
一方、子どもたちはスモークがたかれた中を通過する煙ハウスや水消火器による放水を体験した。
最後に川和さんが、災害時に役立つグッズとして、ラップ(体に巻いて暖める・何かに敷き詰めて食べ物を入れる)、養生テープ(ガラス飛散防止や「SOS」表示)、ゴミ袋(穴を開けてかぶりカッパにする・水が深い場所を歩く時に足を入れて靴を履く)、ビニールひも(こより状にして丸くしたものをつなげ脱出用に縄ばしごとする)などを紹介した。
住民からは「各班は何をきっかけに活動を始めればよいか」との質問が出て、川和さんは「市が全員避難を指示した時になる」と答えていた。
訓練に初参加した北面千枝さん(82)は「細かく説明してもらえてよかった。一番怖いのは火災。防災用品のリュックはあるが、持ち出す時間があるか心配」と言う。先の大雨の際、明け方避難所に避難したという石毛絹江さん(70)は「いい訓練だったのに、暑いからか参加者がちょっと少なかった」と残念がっていた。
課題は、集合住宅も含めると全世帯の5割前後が町会に加入していない点だ。訓練にも参加していないため、万一の際、どう行動するか読めない難しさがある。川和さんは「災害時の手順などを再確認してもらえたと思う。あとはその場で臨機応変に対応していくしかない」と話していた。
自主防災会、髙い組織率
三郷市危機管理防災課によると、今年4月現在の同市の自主防災組織の組織率は96・3%で、県平均91・9%、全国平均84・3%(いずれも昨年4月現在)を大きく上回っている。同市では1995年の阪神・淡路大震災を機に防災意識が急速に高まり、97年に自主防災組織の連合組織である連絡協議会を結成した。防災指導者の育成などを評価され、2014年には同協議会が防災功労者内閣総理大臣表彰を受けている。