支援の充実が課題 「人口減少問題」出前講座
越谷市越ヶ谷の県立越ヶ谷高校(加藤元校長)で8日、初の「越谷市の人口問題を考える」出前講座が行われ、2年生の「地理」選択生徒135人が受講した。未婚化・晩婚化や少子化などに伴う人口減少問題の解決策を考えようと、埼玉県と越谷市の担当職員をゲストティーチャーに招き、県と市の人口問題の現状と課題、取り組みを学んだ。埼玉県は昨年4月の人口推計(総務省発表)で初めて人口減少に転じ、合計特殊出生率は全国42位の低さ。生徒たちは、子育て支援などの対策について熱心に耳を傾けていた。
この授業は、教育プログラムを提供する一般社団法人「近未来ハイスクール」(東京都千代田区、小林利恵子代表理事)が呼びかけ、同高から「人口問題」というテーマをもらい、県と市の担当者をコーディネートして実現した。
授業では、県少子対策課の永田聖(さとる)主事が現状などを解説。人口減少がもたらす課題として、「地域社会の活力低下、労働人口の減少、社会保障費の増大」を挙げた。対策として「経済面をバックアップする子育て支援と、結婚したい人をスムーズに結婚できるようにする支援が重要」と話した。
埼玉では核家族が約6割と非常に多く、子育てに親などの支援を受けにくい。夫は通勤時間が長く、家にいられる時間が短いため、「母親の負担が大きく、父親の子育ての参加が課題」という。
一方、「未婚の人の8割は結婚したい」と考えていることから、県は人工知能(AI)による結婚支援事業「恋たま」を2018年度からスタート。スマホで質問に答えると、AIが相性のよい相手を紹介する。県と県内47市町村、民間企業が参画する官民連携事業で、昨年12月末現在で1万4798人が登録。昨年度の成婚組数は128組、事業開始からの累計は316組に上るという。
続いて、越谷市政策課の古海卓哉調整幹が「越谷市の人口」について話した。1958年に市制施行した越谷は地下鉄日比谷線の相互乗り入れを機にベッドタウンとして急成長。2008年の「レイクタウン」まちびらき、15年の「中核市」移行などで、21年に34万5047人まで増えたが、これをピークに、昨年初めて減少に転じた。
古海調整幹は「60年には約26万人まで減少すると見られるため、約29万人を目指す。そのためには、安定した雇用、結婚・出産・子育ての支援を充実させ、まちの魅力を高めることが重要」と述べた。市独自の幼稚園でも保育が出来る「こしがやプラス保育・幼稚園事業」が好評で、待機児童減少の効果があったという。
授業を終えて、蓮沼琉空(りく)さん(17)は「子育てはお金がかかって大変、社会全体で支援していく必要があると感じた。『恋たま』は初めて知ったが、AIの婚活なんて面白そう」と話した。竹内かれんさん(17)は「独自の子育て支援に興味を持った。プラス保育はとてもいい制度。こうした公的サービスがあることを多くの人に知ってもらうことが必要だと思った」と話した。
授業を担当した社会科の山澤賢勇教諭(30)は「身近な問題をプロの行政の方から話を聞けて、充実した授業になった」と話した。近未来ハイスクールの小林代表理事(54)は「人口問題を知ってもらい、自分の住むまち、通うまちに関心を持って、まちの魅力作りのアイデアが生まれれば」と話していた。