最新のニュース 越谷市

越谷に民間キャンプ場 独自モデルへママ奔走 

9月のオープンに向け関係者と話し合う妹尾さん(左から3人目)=越谷市観光協会で=
9月のオープンに向け関係者と話し合う妹尾さん(左から3人目)=越谷市観光協会で=

9月、中川河川敷に 地元企業・団体が協力

 今年は越谷キャンプ元年――。越谷市東町の中川沿いに市内初となる民間キャンプ場が9月にオープンする。「越谷にキャンプ場をつくりたい」と、同市赤山町のママキャンパー、妹尾早南(せのお・さな)さん(38)が一昨年、キャンプ場を開設・運営する会社「キャンプナノ」を立ち上げ、準備に奔走している。用地は地元の住宅メーカー・ポラスグループの「中央住宅」(品川典久社長)が協力。運営は一般社団法人「越谷市観光協会」が支援し、魅力あるアウトドア施設を目指している。予定地に隣接する「市民農園」とコラボしたり、レンタサイクルを活用したサイクリングキャンプなど、新たな「越谷モデル」のキャンプ場を目指している。


 キャンプ場予定地は敷地約1000平方㍍。中川の河川敷に隣接し、テントサイトは10区画を計画。管理棟と炊事場も建設する。コンセプトは「Backgarden base(バックガーデン・ベース)」。「backgarden」(裏庭)のように身近にあるプライベート空間でキャンプを楽しんでほしいという願いを込めた。
 予定地は「中央住宅」の所有地。一昨年7月26日付の「東武よみうり」で、妹尾さんが「キャンプ場の土地を探している」ことを知った同社の品川社長が、「東町に遊休地があるので使いませんか」と呼びかけたのが始まり。妹尾さんもすぐに現地を見に行き、川沿いと市民農園に隣接しているところが気に入り、準備をスタートした。
 同社事業企画室の野矢健介係長(40)は「妹尾さんの事業構想が弊社の理念であるまちづくりや地域社会の期待に応えることにマッチすると考え、興味を持った」と述べ、「キャンプ場が観光やコミュニティーの拠点となり、地域社会の価値を高めることになれば、さらに越谷に人が集まる」と期待を込める。同社と妹尾さんの間で借地契約を結び、毎月定額で土地を借りられることになった。

 妹尾さんは「越谷でキャンプしてくれる人はいるのか」をリサーチするため、一昨年10月にレイクタウンで開催されたイベント「レイク&ピース」に出展し、大相模調節池周辺で「デイキャンプイベント」を開催。参加者193人にアンケートを取ったところ、全員が「越谷にキャンプ場ができれば行ってみたい」と回答し、自信を得た。キャンプで何がしたいかは「焚き火(たきび)」「テント設営」「バーベキュー」が上位を占めた。
 妹尾さんは「キャンプ初心者向けにテントなどの道具をすべて借りられる『手ぶらプラン』を考えています。隣の貸農園の利用をセットにしたプランや、金曜夜の仕事帰りに利用してもらう『キャンプフライデー』など近接地のメリットを生かしたプランを考えています」と話す。
 利用料金は未定だが、大型区画(12×8㍍)で1泊2人で1万円、小型区画(6×5㍍)で1泊2人6000円を想定している。
 キャンプ場のシンボルともなる「管理棟」はログハウスのキットを購入し、建設する。今年春にログハウス建設の「ワークショップ」を開催し、子どもから大人まで参加者を募集し、皆でログハウスを手作りする。

 越谷市観光協会も当初から新たな観光拠点の建設を支援。中村将義・事務局長(44)は「一昨年から『技博(わざはく)』などのキャンプイベントを企画するとすぐに申し込みがいっぱいになり、市民ニーズの高さを感じている。駅や商業施設にも近く利便性は抜群。キャンプ場ができれば、当協会のイベントを企画して多くの人を呼びたい。皆でキャンプ場を作り上げていければ」と話す。
 最初にキャンプイベントを呼びかけた「レイク&ピース」実行委員長の畔上順平さん(46)も、「予定地は川に隣接し、カヌーなど船を利用した新たなキャンプを提案するなど可能性を探りたい」と協力を惜しまない。
 妹尾さんは「開設後は、中川河川敷の利活用に向け、行政と相談し、公園としての整備やカヌー乗り場の創設など、キャンプ場に隣接する中川河川敷を越谷の新たな観光拠点としてさらに情報発信していきたい」と夢を広げている。

一度の体験で人生一変 建設に向け会社立ち上げ

 妹尾さんは、元銀行員の夫(39)、小学5年の長男(10)、小学2年の長女(7)の4人家族。6年前に夫の転勤を機に神戸市から越谷市に転居してきた。三重県伊賀市出身で、東日本での暮らしは初めて。越谷の「居心地の良さと便利さ」が気に入って永住を決意、3年前に市内に自宅を購入した。
 キャンプとの出会いは2018年3月。当時、幼稚園に通っていた子どもの友人家族4組で栃木県那須町を訪れ、初キャンプ。雨の寒い日だったが、「凍えた体で感じる焚き火の暖かさ。外で食べるご飯のおいしさ。雲の切れ間から見えた星空の美しさ。そのすべてに感動し、子どもたちもいつも以上によく遊んでいる姿を見て、すっかり魅了された」と言う。
 それまではアウトドアと無縁で、「旅行は温泉」派だったが、すっかりはまり、週末ごとに静岡や山梨、栃木、群馬などでファミリーキャンプやグループキャンプを楽しむ日々が続いた。
 そんな中、20年冬からのコロナ禍で学校は休校、遠方への旅行も制限され、「家族も友人たちもみんな閉塞(へいそく)感を感じていた」。県外への外出自粛が叫ばれ、「身近にキャンプ場があれば、コロナ禍でも楽しくリフレッシュできるのに。近くにキャンプ場がないなら自分で作ろう」と考え、会社を立ち上げた。
 現在は、夫の浩平さんも銀行を退職、早南さんとともに「キャンプナノ」の代表となり、夫婦二人三脚でキャンプ場建設に取り組んでいる。