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いのちの電話 コロナ追い打ち 相談増

毎日多くの「自殺願望」の相談電話を 受ける相談員(埼玉いのちの電話で)


 「勤め先が休業し仕事がなくなった。死にたい」「リモートワークで人と会わなくなりさびしい」――。コロナ禍で深刻な内容の相談が急増している。自殺予防に取り組む「埼玉いのちの電話」(事務局・さいたま市)は昨年1年間で2万1986件の相談を受け、全国最多となった。コロナ禍で生活苦を背景に、「自殺傾向」といわれる自殺願望を訴える相談が増加傾向にあるが、「電話がつながらない」という苦情も多い。回線を増やすには相談員を増やす必要があり、相談員養成が急務となっている。

 「埼玉いのちの電話」は1991年9月開設。現在、ボランティアの電話相談員264人(実働)が、電話7台、24時間態勢で対応している。年間の相談件数は2万1000件を超え、10年連続で全国最多だ。1件当たりの相談時間は39分で、自殺をほのめかす深刻な内容が増えている。
 2020年7月から、新たにフリーダイヤル(☎0120・783・556)による「自殺予防いのちの電話」を開設。毎日全国34の「いのちの電話」とともに実施している。昨年12月末までにかかってきた電話は全国で2万2954件。そのうち、埼玉で481件受けた。
 内容は「病気で仕事を辞め、アル中になり、妻子は家を出て行った。死にたい」、「重度障害の子どもを持つ母親。父から『実家に連れてくるな』と言われ、32年間も行っていない。周りに味方になってくれる人がいない。もう限界」など深刻なものばかり。
 埼玉いのちの電話理事の松井晴美さん(66)は「長いと3~4時間話を聞くこともある。『飛び込む』と話す受話器の奥で踏切の音が聞こえ、終電が終わるまで電話をつないだ相談員もいた」と話す。
 あえてアドバイスは行わず、聞くことに徹している。内藤武・事務局長(78)は「専門家でなく、無償のボランティアだからこそできる、聞いて寄り添う姿勢が必要」という。

受け手不足が深刻

 コロナ禍で誰かの支えになりたいと、新規相談員を希望する人の数はここ2年で増えてきた。しかし人手不足はいまだ深刻だ。
 相談員になるには、1年半の研修を受ける必要がある。一方で、研修には埼玉では6万円と安くない自己負担金が必要だ。内藤事務局長は「非営利団体のため、寄付金で活動が支えられている。心苦しいが、やむを得ない」と話す。

 10代、20代の若者の相談を受けようと14年からインターネットによる「メール相談」をスタート。昨年1年間で763件の相談があり、その4割が20歳以下だ。ただ、メールは文章にボリュームがあり、回答も複数名でまとめるため時間がかかり、即応が難しい。
 内藤事務局長は「相手に寄り添って、少しでも心の落ち着きを取り戻してもらうことが第一。この理念を大切にしていきたい」と話している。

10日に説明会


 埼玉いのちの電話は、「電話ボランティア募集説明会」を10日午後2時から越谷市中央市民会館5階会議室で開く。説明会は事前予約不要。
 問い合わせは「埼玉いのちの電話事務局」(☎048・645・4322)へ。なお、相談電話は☎048・645・4343(24時間対応)まで。