最新のニュース 越谷市

「ADHD」生きづらさ語る 越谷で初の家族向け教室

自らの発達障害について話す本谷正江さん(中央)と夫の幸雄さん(左)、笠原さん(越谷市中央市民会館で)


 いつも動き回る、集中力がない、集団になじめない、忘れ物が多いーーといった特徴のある発達障害の一つ「ADHD(注意欠如・多動性障害)」。周囲の理解を得られず、苦しむことが多い。その当事者と家族が、同じ悩みを抱える家族向けに体験談を語る教室が17日、越谷市中央市民会館で開かれた。当事者が人前で体験談を語るのは全国的に珍しい。ADHDは「自分の最高の味方、応援者だ」という当事者の言葉に、参加者は気持ちを前向きにしたようだった。

 「大人の発達障がいの家族教室」は、越谷市保健所こころの健康支援室が初めて実施。22人が参加した。
 体験を語ったのは、同市谷中町の学童保育室指導員、本谷正江さん(50)と草加市新栄の笠原二代さん(65)。本谷さんの夫の会社員、幸雄さん(59)も「ADHDの家族」として講師を務めた。
 本谷さんは2018年にADHD当事者や家族の悩み・相談を聞く市民団体「あではで・埼玉・家族の会」を立ち上げ、同じ悩みを抱える人たちを支えている。

 指導員歴約30年の本谷さんは約20年前、ADHDの小学1年生女児を預かった際、「いつも動き回り、ルールを守れず、集中力がない」ことに悩まされた。対応を模索する中、ADHDには動き回らなくても「不注意優勢型」という症状があることが分かり、実は自分も当てはまることに気づいた。
 その頃、夫がうつとなり、本谷さんも精神的に不安定になって、専門医からADHDと診断された。「子どもの頃から忘れ物が多かった。診断で、努力が足りなかったという問題ではなかったと納得した」と言う。
 覚えることが苦手で、漢字の書き順や英単語を覚えられず、受験勉強に苦労した。「無意識に衝動的な行動をしたり、音の聞き分けが出来ず歌が覚えられなかったり。昼間に強烈な眠気が襲い、コントロールするのが難しい」など特有の症状を明かした。

 続いて笠原さんは、「以前から衝動が抑えられないなど気になっていた。52歳の時にADHDだと分かった。偏見を受けることもあるが、悪いことばかりではないとプラス思考で生きている」と話した。

 本谷さんの夫、幸雄さんは「妻の通院に付き添ううちに神奈川県の(ADHDの)自助グループを知った。早速、参加したら、悩みを話せて居心地が良かった。居場所の大切さを実感し、埼玉に家族の会を作るきっかけとなった」と話した。

 質疑応答では、「職場でADHDをオープンにして、仕事を続けるにはどうしたらいいか」、「息子が自閉スペクトラムで昼夜逆転の生活をしているが、直したい」などと質問が相次いだ。
 教室に参加した菊池房子さん(69)は「自分もADHD。若い頃、娘を衝動的に怒って抑えられないため、専門医の診断を受けて分かった。今は治療薬もあるが、家族の会に入って当事者同士で話し合うことが心の安定につながっている」と話した。

 同支援室は家族の会の窓口になっており、「おかしいと思ったら気軽に相談を」と呼びかけている。
 <問い合わせ>越谷市保健所こころの健康支援室☎963・9214。

 発達障害 生まれつき脳の働きに偏りがある障害で、注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム障害(ASD)、学習障害(LD)などがある。知的発達に遅れはないものの、ADHDの人は忘れっぽかったり、落ち着きがなかったりする。ASDの人は、相手の気持ちを読み取ることが苦手だったり、こだわりが強かったりするなどの特徴がある。