治療への悩みや将来への不安を抱えたがん患者らが、毎月1回、三郷市内の寺の本堂に集まり、語り合ってきた〝がんカフェ〟がこのほど、100回目を迎えた。患者らの苦しみを見つめてきた、同市内の看護師が「悩みを自由には話せる交流の場を」と開設したもの。これまでに300人余りの患者、家族らが参加しており、「悩みをさらけ出すことで前向きになれた」(患者の一人)などと、患者らにとって生活に欠かせない貴重な居場所になっている。
「がんカフェ」が開かれているのは、同市早稲田の高応寺(酒井菜法住職)。同地区にある「アカシア訪問介護ステーション」所長の看護師、川上貴子さん(60)が、2013年9月から始めた。
以前、勤めていた病院で緩和ケア病棟や外来を担当した川上さん。痛みや吐き気などのつらい症状を緩和したい、と願うがん患者らと向き合ってきた。
そこで、「患者さんは次の外来まで、つらさを誰にも言えないのでは。悩みを自由に話し、よりよい生活のためのアドバイスができる場所が必要」と痛感したのが、開設の動機だった。
がんカフェは、毎月第4土曜の午後2時から約2時間。終末期のがん患者や、がん宣告されたばかりの患者、遺族など、毎回約20人が集まり、闘病生活への不安、最愛の家族を亡くした悲しみなどを吐露し、情報交換するほか、余興やおしゃべりを楽しんでいる。
川上さんは、つらい時の心の持ち方や「エンディングノート(終活ノート)」の書き方、今後の生き方などをアドバイス。酒井住職(46)による瞑想の時間もある。
がんカフェに参加して1年という、三郷市彦成の佐藤美智子さん(70)は現在、乳がんのため、治療、通院している。「抗がん剤の情報はじめ、がんカフェに参加し、語り合うことで前向きになれた」と話している。
コロナ禍で4回ほど中止を余儀なくされたが、オンラインで実施したこともあった。寺での開催について、「病棟などだと、治療以外の話や生死については話しにくい。寺は昔から身近な存在なので」と川上さん。
今年3月26日で100回目を迎え、今後は「がんに限らず、いつでも自由に来られる〝まちの保健室〟を作りたい」と話し、「来た人が笑顔で帰れる居場所づくり」に意欲を燃やす。
「がんカフェ」の問い合わせは「アカシア訪問介護ステーション」☎950・1250まで。