草加市

映画になった「草加煎餅」

 

 草加市に縁のある中国・内モンゴル自治区出身の馬頭琴奏者が、「草加せんべい」をめぐる家族愛の物語の映画製作を進めている。「草加煎餅物語」と題したドキュメンタリータッチの映画で、たまたま出会った煎餅の味に感動し、映画プロデューサーの協力を得て、市内の老舗煎餅店に密着して撮影している。完成後の来年2月頃、地元草加で上映するほか、演奏旅行で訪れた国々で巡回上映する予定だ。「『草加せんべい』の名が世界に知れわたるきっかけに」と関係者は映画の完成を待ちわびている。

 

 映画を製作しているのは20年前に来日し、世界各地で演奏活動をするほか、東京富士大学の非常勤講師を務める馬頭琴奏者、セーンジャーさん(45)(千葉県市川市在住、日本での活動名・賽音吉雅)。

 知人の元草加市議、齋藤幸子さん(81)を通じ、10年前から、草加で演奏会を開いているが、初めて食べた「草加せんべい」に感動し、齋藤さんの紹介で同市吉町の老舗「いけだ屋」(1865年=慶応元年創業)を訪問、工場を見学させてもらった。そこで、「何よりも家族愛あってこその伝統と歴史の結晶と感じて」感動が一層深まったという。

 「『せんべい』が、モンゴル語で、『こんにちは』という意味」だったことも、煎餅大好きにつながった。「この感動を馬頭琴演奏で巡る国の人たちにも伝えたい」とセーンジャーさんは思い立った。

 以前、モンゴルをテーマにした映画を製作した際に知り合った、映画プロデューサーで監督の藏原惟二(これつぐ)さん(85)(実兄は『南極物語』の監督の藏原惟繕(これよし)さんに相談し、企画・監修をしてもらった。「時代の変化に合わせ、チャレンジをしながら伝統を受け継いできたことに焦点をあてた」とプロデュースした藏原さん。

 高画質の4Kのビデオカメラで、9月から草加の自然や子どもたちなどを撮影。「いけだ屋」では製造工程をはじめ、池田彰社長、池田國雄会長らのインタビュー、おかみさんが商品名を墨字で書く様子などを収録した。

 草加の風土や伝統、歴史を、煎餅を通して描いたドキュメンタリー映画は約60分となる予定。草加市や同市教委、同市観光協会も協力した。池田國雄会長(82)は、「世界の人に伝統の味を知ってもらうよい機会」と期待する。

 監督のセーンジャーさんは、馬頭琴演奏を映画音楽に収録するなど、編集作業に余念がない。セーンジャーさんは「地道に伝統の味を大切に守る日本人家族をモチーフにした。日本の煎餅文化を世界に伝えたい」と力を込める。

 上映会は草加のほか、モンゴル、中国、台湾、ドイツ、イタリア、カナダなどを予定している。