来月から地下探検ツアー

国土交通省関東地方整備局と春日部市、東武トップツアーズが、首都圏の水害軽減のために建設された世界最大級の地下放水路「首都圏外郭放水路」(同市)の本格的な「防災ツーリズム」を官民合同でスタートさせる。
来場者に防災の知識を身に付けてもらうと同時に、観光施設としての魅力を広め、インバウンドによる集客を取り入れるのが狙いだ。新コースを設定して4月16日からツアーを始める予定で、年間来場者を10万人まで引き上げるとしている。
同放水路は、日本が世界に誇る最先端の土木技術を結集して建設された治水施設。特に、巨大な柱59本が高さ18㍍の天井を支える調圧水槽は壮大なスケールで、「地下神殿」とも称され、年間約6万人以上が有料見学会に訪れる。最近では、SNS「X」にポストした調圧水槽流入時の動画が1万以上再生された。
10日に春日部市上金崎の地底探検ミュージアム「龍Q館」で行われた記者発表では、同放水路を情報発信基地としてパワーアップさせるための八つの計画が発表された。「災害の自分事化」を推進するため見学者に災害への理解を深めてもらうこと。インフラを観光として取り入れインバウンド集客を図ること。さらに日本の防災、土木の技術を発信していく内容だ。
計画には、地下河川を歩く「アドベンチャー体験コース」の新設、大人気ゲーム「マインクラフト」の世界で同放水路を再現した防災教材のウェブ公開、「災害から命を守る自分事化カード」の全見学者への配布、「防災コンシェルジュ」による解説、放水路の説明を21 言語対応にすることなどが盛り込まれた。
このうちアドベンチャー体験コースは、これまで未公開だった第3立坑を開放するもので、胴長靴に履き替えて深さ50㍍下へ下り、トンネルの中を歩く。まさに地底探検だ。4月16日から6~10月を除く月1回、定員16人で年間100人限定、1万5000円でスタートする(未就学児参加不可)。
現在行われている「地下神殿コース」(約55分、1000円)、「立坑体験コース」(約110分、3000円)、「ポンプ堪能コース(約100分、2500円)、「インペラ探検コース」(約110分、4000円)も、見学枠を増やして開催する予定だ。
さらに9月からは、地下神殿をライトアップし、音の演出も加えた異次元空間を作り出す。「見るだけで迫力がある、幻想的なものを目指す」と同整備局江戸川河川事務所長の小池聖彦さんは話す。東武トップツアーズ営業統括本部の望月康紀部長は「春日部市の新たな周遊型観光を目指し、魅力あるコース作りができた」と自信を示した。
小池所長は「日本の技術を『防災ツーリズム』として世界に発信し、施設の役割や重要性を理解し、災害を自分事と考えてもらえれば」と新たな挑戦に胸を躍らせていた。
<問い合わせ>
東武トップツアーズ春日部支店
☎048・761・8741(安原さん)

首都圏外郭放水路 春日部市の上金崎から小渕にかけて延長約6. 3㌔、の地底約50 ㍍を流れる世界最大級の地下放水路で、利根川水系に属する一級河川。周辺の中川、倉松川、大落古利根川、18 号水路、幸松川などが洪水となった際、一部を江戸川に流して被害を軽減させる。1993 年着工、2006 年に全区間が完成し、流域の被害軽減に大きく貢献している。容量は池袋の「サンシャイン60」1本分に相当。これまでに81 回ポンプを稼働させている。公式の愛称は「彩龍(さいりゅう)の川」。