「心と向き合ってほしい」吉川・専門学校

吉川市保1丁目の吉川福祉専門学校で、久田晴實校長(68)が「組織人間関係論」の授業で学生と一緒に「短歌」を詠んでいる。介護福祉士を目指す学生たちに、自己を見つめ、介護の「心」を整えてもらおうと始めた。2022年と昨年には「NHK新・介護百人一首」に学生たちが応募し、計4首が見事、入選を果たした。久田校長自身も、今年の「歌会始」(お題「夢」)に佳作で入選するなど、今では授業を越えて楽しんでいる。
同専門学校は、実践力のある介護福祉士の養成を目的とする2年制の専門学校。各学年40人の学生が介護福祉科で学んでいる。短歌は、最初は軽い気持ちで始めたものだった。4月の授業でお題を出し、最後の授業で「歌会」をする、「文化祭」で発表するなど、学内での小さな催しだった。それがいつしか「新・介護百人一首」応募という目標を持つ大きなイベントとなった。
久田校長は、授業で短歌のノウハウを指導している。これから介護に取り組む学生が自身の気持ちに向き合ってほしいという思いからだ。「お題」を基に学生に短歌を詠ませ、最後に名前を伏せて全員の歌を壁一面に掲示し、お気に入りの歌に付箋を貼って投票してもらう。付箋の多かったものの中から一席~五席までを選び、詠み手の学生に歌の背景や歌に込めた思いを語ってもらい、生徒全員で考えを共有している。授業で詠んだ歌は、毎年、全員が新・介護百人一首に応募し、これまでに4首が入選した。
新・介護百人一首は介護する、介護される中で感じた素直な思いを短歌に込めて投稿するもの。昨年は、全国5783人から1万2440首が寄せられ、選出されるのは100首という狭き門だ。入選歌はNHKのホームページにも掲載され、応募者全員に入選歌集をもらえるため、学生にもいい励みになっている。
久田校長は趣味で短歌を続けてきた。それまで授業では、あいさつ、マナー、電話の取り方、名刺の渡し方など一般常識的なものを取り入れてきた。「心」を整えることも大事だと、短歌を取り入れたところ、「楽しみながら家族への思い、介護に進んだきっかけなどを共有することができるようになった」という。
来年度も4月から授業でミニ講座を開き、9月初旬の新・介護百人一首に全員で応募する予定だ。学内では「学生同士で票を入れるから、僕のは選ばれない」と久田校長は悔しがりながら、「卒業しても短歌を続けて」と学生にエールを送っている。
<令和4年度NHK新・介護百人一首入選歌>
ひさよです まさよじゃないよ ひさよです みさよでもなく ひさえでもなく(杉沼久代)
亡き母に尽くしきれたか悔いがあり我還暦の介護士目指す(根岸裕幸)
<令和6年度入選歌>
祖母の足初めて見た夜に決めましたあなたを支える介護士になると(君島あみ)
介護福祉士夢見て来日した君に「ご自愛を」といつも声かけられている(久田晴實)
<令和7年歌会始(お題「夢」)佳作>
アオザイに輝く君が介護士の夢かなえ今朝旅立ちて行く(久田晴實)