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吉川/夢の電動アシスト開発 丸石サイクルRe:BIKE

減速時に発電 驚異の1000㌔走行

「Re:BIKE」を持つ丸石サイクルの栗山社長
「Re:BIKE」を持つ丸石サイクルの栗山社長

 昨年で創業130周年を迎えた吉川市小松川の「丸石サイクル」(栗山孝七社長)が、1回のフル充電で1000㌔走行できる次世代の回生電動アシスト自転車「Re:BIKE(リ・バイク)」を売り出した。1000㌔は東京|下関間にほぼ相当する。下り坂などで発電しバッテリーに充電することで、一般的な電動アシスト自転車の5~10倍、電気自動車(EV)に比べても2~5倍という、とてつもない走行距離を可能にした。この製品は同市の「ものづくりアワード」大賞を受賞。世界に類を見ない製品を引っ下げて、同社は吉川から世界に羽ばたこうとしている。
 回生充電(発電)機能とは、自転車をアシストするのに使うモーターユニットを発電機として働かせることで、走行中のエネルギーをバッテリーに戻す(充電する)機能のこと。自転車を停止させるために左ブレーキをかけた時やこぐのを止めて坂を下る時に、フロントモーターが発電してバッテリーへ充電する。ユーザーからのアンケートでは、「1000㌔走るなんて夢のようです」「回生ブレーキの技術の向上が楽しみ」などの声が届いている。
 商品開発のきっかけは、受動電子部品を主とした電気機器製造会社の「太陽誘電」(本社・東京都中央区、佐瀬克也社長)から、回生電動アシストシステム「FEREMO」を搭載した自転車の共同開発の話が持ち込まれたことだった。
 実は丸石サイクルでも、電動アシスト自転車がかなり普及した1990年後半、回生充電ができる「さんぽ路」を開発したことがある。だが、当時の充電能力は、少しは電力の足しになるという程度。ところが、「FEREMO」搭載の試作車に乗車した時、「これなら発電量と坂道を上る際のアシストを高いレベルで両立できる」と実感した。
 同社の会議では「1回の充電で1000㌔? 何、言ってんの?」と疑問視する声が出た。それでも「高単価であっても高価値の商品を打ち出していこう」と方向性が決まった。
 だが、実際に商品化できるまでは苦労の連続だった。まずは設計だ。「FEREMO」のユニットを自転車に搭載するために設計図を何度も引き直した。機能面ではフレームデザインやパーツ構成をどうするかに時間をかけた。テストタイプの最初期から話し合いを重ね、何度も変更した。
 形ができ上がると、社員7人が昨年2月下旬から4月中旬に11日間かけて、実際に1000㌔を走行する実証実験を行った。展示会で「1000㌔なんて本当?」という声が聞かれ、「必ず実証しなければと感じた」と商品部企画開発課の鈴木仁さんは言う。
 茨城県土浦市、霞ヶ浦、筑波山などのサイクリングロードや峠コースを使い、平坦地を時速15㌔、上り勾配4度を同10㌔、再び平坦地を同15㌔、下り勾配4度を同20㌔で各1㌔、計4㌔走り、結果を測定。ついに1回の充電で1000㌔走ることを実証した。
 1日100㌔近く走るのは、1日平均5~10㌔という電動アシスト車の普段の使い方からすると、かなり体力が要った。それでも、全日程に参加した鈴木さんは「一定スピードで無理なくこげば疲れない」と乗りやすさを確認した。サドルは薄型のクッションが入っていて、お尻への痛みもなかったという。
 また、ハンドルに付いているメインスイッチには、速度やバッテリー残量の他、消費電力量や二酸化炭素(CO2)排出量が表示される。自動車で1㌔走った場合の排出量で、カーボンニュートラルを目で確認できる。また、発電量の数字での表記は世界初だ。
 「アシストしないで蓄電に回せば災害用にも使える」と鈴木さん。商品部の竹林宏樹部長も「これまでにない、移動手段だけでない価値を世の中に提供していくのが目標」と強調する。回生充電機能を使ってさまざまな夢へとまい進中だ。
<問い合わせ>
丸石サイクルお客様相談窓口☎︎☎︎048・984・1404

「ものづくりアワード」大賞の賞状を受け取る鈴木さん(中央)
「ものづくりアワード」大賞の賞状を受け取る鈴木さん(中央)
自転車を調整する鈴木さん
自転車を調整する鈴木さん