〝侵害〟理解し配慮を
本紙連載「いき活のススメ」のイラストでもおなじみ、越谷市在住の漫画家、手丸かのこさんが、「そうなんだ! 子どもの権利」(子どもの未来社。A5版、並製、160ページ、税別1500円)を刊行した。1989年に国連が採択した「子どもの権利条約」に盛り込まれた諸権利のうち主だったものを、子どもでも理解しやすいよう、わかりやすいマンガで描いている。今年は日本が同条約を批准して30年だが、子どもの権利侵害はさまざまな形で続いている。手丸さんは「子どもはもちろん、大人にも読んでほしい」と話している。
「大人にも読んでほしい」
主人公は小学5年の女の子。秀才で美人でお金持ちのクラスメート、佐藤さんのことを妬ましく思っている。ある日、佐藤さん母娘がスーパーで魚のつかみ取りをしていたとお母さんに聞き、「あのオシャレな佐藤さんが?」とびっくり。誰かに伝えたくてたまらない。でも、クラスで話せば、「人のプライバシーを言いふらすなんてサイテー」と非難されるかも。なら匿名でSNSに投稿しては、と考える。果たしてSNSに他人のプライバシーを書いてもいいの?
答えは「ダメ」。子どもにもプライバシーを守られる権利があり、侵害してはいけないからだ。それをナビゲーター役の「ナビリン」が教えてくれる。
ほかにも「校則や制服について意見を言ったらダメ?」「貸したゲームソフトを返してもらえなかったら?」「先生の”行き過ぎた部活指導”と”体罰”は許される?」といった学校生活や友だちとの関係に潜む権利の問題から、男児の性被害、保護者のネグレクト、宗教2世といったより深刻な社会問題まで、わかりやすく解説している。
さらに、いじめ、人一倍敏感な子ども(HSC)、子どもの戦争被害の三つのテーマについて「ロングストーリーマンガ」を掲載。いじめは自らいじめる側になってしまった苦い体験から、HSCは知人の子どものケースを参考にした。読んでいるうちに「これも権利侵害だったのか」と気づけるようになっている。
手丸さんの前著「知ってる? ジェンダー・セクシュアリティ マンガカラフルKids」(同社)でも一緒に本づくりをした編集者、松井玉緒さんが「子どもの権利についてマンガでわかりやすく伝えたい」という熱い思いを手丸さんに伝え、2人で数か月間にわたり構想を練った。監修は前著と同じく、埼玉大学ダイバーシティ推進センター准教授で、県人権教育推進協議会委員でもある渡辺大輔さんに依頼した。
「日常に潜んでいる自分の権利を探せるマンガ。周りの大人が権利を奪っていることを知ってほしい」と手丸さんは話す。心がけたのは「わかりやすさ」。どうしたら読んだ子どもに抵抗なく理解してもらえるかに工夫を凝らした。各話には、そのテーマが同条約のどの条文と関係あるかも記載されており、「逆字引」としても使えるようになっている。子どもに寄り添うマンガを描き続けてきた手丸さんならではの力作だ。