草加市

草加/肉体改造し主役つかむ

国際芸術祭で優秀女性パフォーマー賞を受賞した増井紬さん

 「さまざまなパフォーマンスが行える『フリンジフェスティバル』を東京近郊で開催したい」と夢を語る。
 今年8月、英エディンバラで行われた世界最大の国際芸術祭「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」で「アジアン・アーツ・アワード」の優秀女性パフォーマー賞を受賞した。

サーカス「ヨア」で演技が高く評価された増井さん

 出演作品は、迷いや葛藤を抱えた一人の女性がさまざまな人と出会いながら希望を見出す物語「YOAH(ヨア)」。国内外で活躍するアーティストが集う新スタイルのサーカスだ。増井さんは主人公ヨアとして、天井から垂れ下がったティシュー(伸びる素材の特殊な布)を使った空中アクロバティック「エアリアル・シルク」を披露。審査員から「物語の象徴」と高く評価された。

 広島県出身。3歳の時に父の仕事で草加市に。小2の時、体が柔らかく、母親の勧めで新体操を始めた。後に実際は筋肉が緩い体質と判明。腹筋をしようとしても起き上がれない。「体力測定で自分だけ腹筋0回だった」。中3で腰椎分離症を発症。長い療養期間を経て、高2の時、インターハイで個人11位となった。しかし、点数をつけられるのが嫌いで、演技やパフォーマンスに興味が向いた。


 2015年、EXILEのライブツアーに参加。翌年、ミュージカルのオーディションに合格した。「この頃、ようやく自分の体質について深く考え、肉体改善を目指した」という。その後、ブロードウェーミュージカル「PIPPIN(ピピン)」日本語版にも出演。この頃から本格的にエアリアル・シルクを学び、東京五輪閉会式ではアクロバットチームでダンスなどを披露した。

 そんな時、日本現代サーカスの新しい旗手として誕生した「CIRQUEWORK(シルクワーク)」の松本一晃代表から「新作のメインビジュアルに」と誘われた。「コロナ禍で腐りかけていた自分とリンクする。今なら演じられる」と快諾した。

 海外の環境と比べ「日本はまだ芸術の敷居が高く、興味のない人も多い。気軽に触れ合ってもらえたら」。  (佐藤 龍一)