急増する依頼に対応苦慮 親族関係の希薄 核家族化が原因
経済的に墓を持てない人や、引き取り手のない「無縁遺骨」で困っている人を助けようと、三郷市のNPO法人「納骨支援の会」(田原純友代表理事)が、納骨に協力してくれる寺院を紹介する活動を行っている。核家族化などで身寄りのない高齢者が増え、親族関係の希薄化もあって、無縁遺骨は増加している。現在、県内など四つの「賛助寺院」を仲介し、遺骨を送って供養しているが、増え続ける依頼に対応しきれなくなる恐れもあるという。
田原代表は2019年にNPOを立ち上げた。相談者は、故人の身寄りではない個人や葬儀屋、不動産屋、身元引受人、自治体など。火葬まではどうにか済ませたものの、遺骨の引き取り手がなく、収める墓があるかどうかもわからないため、困り果てているケースがほとんどだ。
田原代表が相談内容から引き受けると決めた場合は、賛助寺院の住職に内容を伝える。住職が納骨を受け入れるかどうかを判断する。
納骨までの流れは2通り。一つは遺骨を直接持参する場合。日程を調整し、住職と顔合わせして、納骨式が行われる。故人の名前が芳名帳に記載され、納骨証明書を渡して終了する。
もう一つは相談主がゆうパックによる「送骨」を希望する場合だ。田原代表が手順書の入った「納骨セット」(段ボール)を郵送する。そこに骨つぼをセットして、希望の寺院が書かれた伝票を貼り、郵便局で配送してもらう。配送料は自己負担。料金はいずれも2万円だ。
届いた遺骨は、通常の葬儀と同様にお経をあげてもらい、敷地内の合同墓に埋葬される。寺院によっては、遺骨を納骨袋に移し替えて合同墓に入れるケースもある。
田原代表が仲介しているのは、東京都2か所、埼玉県、静岡県各1か所の寺院。無縁遺骨の相談をして、納骨の承諾をもらったところだ。通常、寺院の墓には檀家以外は納骨できないが、その制限を越えて困っている人に場所を提供してもらっている。
ただ、合同墓のスペースは限られているため、この先ずっと納骨を引き受けてもらうことはできないという。しかも、依頼が右肩上がりに増え、最近は年間100件を超す。そのため「引き受けるのは本当に困っている人だけ」と田原代表は念を押す。
無縁遺骨は年々増え続けている。総務省の調べによると、埋葬されないまま保管されている遺骨は21年10月末現在、全国で約6万柱に上る。このうち約5万4000柱は、身元が判明しているものの引き取り手が見つからないか、親族が引き取りを拒否しているものという。全国の公営墓地の約6割で、死亡者の縁故者がいない「無縁墳墓」が発生していることもあり、今後は縁故者の把握や無縁改葬の促進が課題となる。また、無縁遺骨をなくすためには、本人が生前に遺言などに遺骨の取り扱いを明確に書いておくことや、地域のコミュニティーを活性化させて孤立を防ぐことなどが挙げられている。
「一番いいのは(本人や家族が)檀家になって納骨されること。そこに相談してどうしようもない時、相談に応じる」という。従って「安いから、近いからという相談はお断り。あくまで困っている人優先です」と話している。
<問い合わせ>
NPO法人「納骨支援の会」☎0120・285・500