越谷市

中学生が創作で 自殺予防訴える

 「どうか、命を大切に!」||と越谷市内の小中学生たちが、市内の東武スカイツリーラインの4駅に、自殺防止を呼びかける美術作品を展示している。9月10日から16日が「自殺予防週間」のため、越谷市保健所精神保健支援室が、東武鉄道や市内の小中学校美術部などと協力して、30日まで展示しているもの。市内の小中学校4校の児童生徒らが、アイデアを凝らした立体作品。各駅では利用客らが足を止め見入っている。コロナ禍で自殺者が急増するなか、関係者は「子どもたちの作品が、今一度立ち止まるきっかけになれば」と話している。

 自殺防止を呼びかける美術作品を制作・展示しているのは、同市立北陽中学校、同千間台中学校、花田小学校、東越谷小学校の4校。全4作品が東武スカイツリーライン蒲生駅、越谷駅、北越谷駅、大袋駅の4駅構内で展示されている。
 大袋駅改札口横に展示されているのは、北陽中美術部員6人が制作した「sweet ship」。生徒たちが大好きなお菓子(マカロンやアポロチョコ、チョコボールなど)を載せた帆船を紙粘土で作った。カラフルでかわいらしい、おしゃれな船。高さ約20㌢、幅約30㌢の色鮮やかな立体作品。「新型コロナウイルスで思うように外出できないので、外に飛び出したいという気持ちと大好きなお菓子を組み合わせて夢の船を作りました」と同部代表の塚原美波さん(13)(1年生)。
 同じく同部代表の清水麗暖(ルビ・りのん)さん(13)(1年生)は「一つひとつのお菓子をリアルに作るところが難しかった。色付けも大変で、完成までに約2か月かかりました。帆船の帆の部分にピンクのインクを使って美術部の筆のマークを入れて特徴を出した」という。

 緊急事態宣言で部活動は週2日と制限されたが、部員全員でアイデアを盛り込んで、約2か月で完成させた力作。

 同部顧問の京極恵子教諭(39)は「美術部員は皆仲が良いので、チームワークでいい作品が完成した。生徒たちは作品を制作することで、改めて命の大切さを実感できたのでは」と話していた。
 このほか、千間台中学校美術部の生徒たちは、北越谷生駅に「帰りを待つ」、東越谷小学校の児童らは、蒲生駅に「おあしす・レンジャー・東っ子」、花田小学校の児童は越谷駅に「歌は元気・歌は笑顔・歌は希望」の作品を展示している。

 昨年1年間の自殺者は全国で2万1081人(警察庁)。昨年に比べ912人増加している。男性の自殺者が女性の2倍となっているが、前年からの増加率は女性が15.4%(93人増)、未成年は17.9%(118人増)。未成年のうち、女性が44%(95人)の大幅増だった。
 同市保健所精神保健支援室の小野敦郎室長は「児童生徒の作品はいずれも心温まるものばかり。市民一人ひとりが自殺を特別なことでなく、身近な問題として受け止めてもらいたい」と呼びかけている。