「あきらめない心」伝える
人権講演会が1月31日、越谷市の越谷コミュニティセンター小ホールで行われ、全盲の弁護士、大胡田(おおごだ)誠さんが「全盲の弁護士~どんな困難にも負けない『あきらめない心』~」と題して講演した。越谷市人権教育推進協議会、同市人権擁護委員協議会越谷部会、同市、同市教育委員会の共催。会場では手話通訳と要約筆記も行われ、310人が耳を傾けた。
大胡田さんは先天性緑内障で12歳の時に失明。筑波大学附属盲学校から慶応大学法科大学院法務研究科へ進学し、8年をかけて5回目の挑戦で司法試験に合格した。現在、全盲の妻と子ども2人の4人家族だ。
暮らしの中で感じるのは、教育、就職、生活上とさまざまな場面で障害者が「バリア」に直面していることだと言う。例えば、大学受験では全盲者の受験を認める大学が少なかったこと、下宿先を探した際には「危ないから」という理由で断られたこと、学校では点字でノートを取る音がうるさいと言われたことなど。さまざまな障壁に直面するたびに涙を流してきた。
だが、それが強さにもつながった。「だから無理」と逃げるより、「じゃあこうする」と考える方が人生は楽しいと言う。司法試験に4回不合格だった際は、母親から「迷った時は自分の心が温かいと感じる方を選びなさい」と言われ、自分が何を欲しているかを考えて、受験の続行を選んだ。「差別されている人の手伝いをしたい。弁護士になりたい」という気持ちの方が強かったからだという。
山登りが好きな父親からは「ダメだと思った時、山頂の一歩手前にいる。あと一歩踏み出せば山頂」と教えられてきた。実弟も全盲で高校教師をしている。障害者も健常者と同様に扱う両親と、ライバルのような弟の影響は大きかった。
今後の夢は「(歌手の)妻と趣味のギターを持って、同じステージに立つこと」だ。「工夫で人生楽しくなるなら、そっちがいい。心の持ちよう」と前向きだ。来場した全盲の柴井忠司さん(78)は「私も障害者だから、今日言われたことを実践してきたい」。二階堂正己さん(85)は「全盲の人があれだけ頑張っている。いい話を聞けた」と話していた。講演会の後、性の多様性を認め合う内容の「バースデイ」の映画視聴が行われた。