三郷市

三郷市/安心して授乳できる場を

 「自分のペースで授乳でき、おむつ替えもできる場所。休憩もできるので、『赤ちゃん休憩室』と言っています」。BOX型授乳室の好評ぶりに笑顔を見せる。

 幅150㌢、奥行き106㌢、高さ214㌢のコンテナ型。鍵のかかる室内にソフトチェアを備え、外部確認モニター、荷物フック、コンセントもついている。このほど三郷市内の8施設に設置された。
 設置が簡単で、後付けもできることから、授乳室のない施設などから引き合いが来ている。「市外、県外からも設置したいという声が来ている」と喜ぶ。

BOX型の授乳室「miruru」を開発したMISTRAL代表、中野さん

 東京都杉並区出身。大学卒業後、自動車販売会社に入社した。夏の暑い日、ベビーカーを押し、子どもの手を引いた母親が「授乳したいので場所を貸してほしい」とショールームにやってきた。おむつ替えの設備があるお手洗いを案内したが、母親は「子どもにとって授乳は食事。衛生面を考えると、車の座席などきれいな場所であげたい」と言う。上司に相談し、展示車を使ってもらった。
 「まだ20代で、大変さはわからなかったが、子育てについて考えるきっかけになった」と振り返る。

 結婚を機に、建築資材を扱う商社に転職。海外出張中、独立したユニット型のATMブースを見てひらめき、BOX型の喫煙ブースを考案した。東京五輪に向けて受動喫煙防止の必要性が高まり、売れるようになった。
 4年前、BOX型授乳室を開発するために独立。多くの母親に意見を求めた。「驚いたことに、異性の視線より、『授乳の仕方が悪い』『授乳姿を見ると嫌悪感が沸く』といった同性からの心無い言葉を気にする人が多かった」。

 そうした声を反映し、1年がかりで「miruru」を完成させた。組み立て式にしたのも、多くの場所に普及させたいという思いがあったからだ。「設置が進み、県東南部が『赤ちゃんの駅』の本場になるとうれしい」と期待する。
 仕事の傍ら、コミュニティー作りの手伝いを続けている。「安心して過ごせる場所を作る」のが目標だ。(佐藤 龍一)