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三郷市/スペシャル五輪・卓球 驚異の粘りで逆〝金〟

スペシャルオリンピックス 

 スポーツは知的障害のある人々の成長にプラスになるとし、成果の発表の場である競技会を年間通じて行っている国際的なスポーツ組織。世界大会は夏季、冬季とも4年に1度行われる。性別や年齢、スポーツのレベルを問わず、スポーツを楽しみ分かち合うことが重要とし、4位以下にはリボン(失格者にも参加賞のリボン)が贈られる。今大会には190の国と地域から、約7000人の選手が参加。日本選手団から45人の選手が卓球や競泳、陸上競技、サッカー、馬術など、9つの種目に出場した。

大会初出場で金メダル1つ、銀メダル2つを獲得した海老澤さん

初出場、メダル3つの快挙

 6月にドイツ・ベルリンで行われた知的障害者のスポーツの祭典「スペシャルオリンピックス夏季世界大会2023」卓球競技で、三郷市さつき平の海老澤京子さん(43)が、シングルスで金メダルを、ダブルス2種目で銀メダルを獲得する活躍を見せた。シングルス決勝戦では、予選で敗れたルクセンブルクの選手を逆転しての勝利。初出場での快挙に、海老澤さんは「4年後の大会にも出場できるよう頑張りたい」と、早くも次回大会に向けて意欲を燃やしている。

帰国後も練習に励む海老澤選手(三郷市立ピアラシティ交流センターで)

 海老澤さんは昨年11月、日本選手団選考を兼ねた、「2022年スペシャルオリンピックス日本夏季ナショナルゲーム・広島」の卓球ユニファイドダブルス(障害者と健常者がチームメートとして組むダブルス)で優勝。日本選手団に選出された。

 世界大会では女子シングルス(WS+30-D1)、女子ユニファイドダブルス(UWD-2)、ミックスダブルス(MD30+01)(障害者同士の男女ダブルス)の3種目に出場。試合は全て総当たり戦。予選では2セット先取。上位4者が決勝戦に進み、決勝戦では3セット先取で勝敗が決まる。世界大会は初出場ながら、緊張や重圧をはねのけ、出場した全種目でメダルを獲得した。

 海老澤さんを指導するコーチの佐藤裕子さん(79)は、3種目で計73セットを戦い抜いた海老澤さんの体力にも注目している。
 特に金メダルを獲得した女子シングルスでは、予選を5勝1敗で決勝に駒を進めたが、予選で1敗を喫したルクセンブルクの選手と再戦することになった。11-9、11-7と2セットを先取されて後がない中、海老澤さんは持ち前の集中力と体力で3セット目以降を11-6、11-8、11-6と連取して大逆転。決勝を3勝0敗で勝ち抜き、優勝を手にした。

 その時の様子を海老澤さんは「応援してくれるみんなの声が力になった。ここが今回の最高潮。ルクセンルグ戦後は疲れてしまい、メダル授与の時にも笑顔が出なかった」と振り返る。
 佐藤コーチは「ラリーを続けて相手のミスを誘った。丁寧にコースを突き、粘り勝ちした」といい、「勝利した時は思わず隣人と抱き合った。あの時の状況を思い出すと、今でも涙があふれてくる」と話す。

 海老澤さんは春日部市出身。小学校3年生の時、三郷市に引っ越してきた。小学校入学後、勉強でわからないことが多く、検査で知的障害が判明した。
 卓球との出会いは中学生での部活動。高卒後、「あいおいニッセイ同和損害保険」(新納啓介社長、本社・東京都渋谷区)(当時は千代田火災海上保険)に入社。一時、大宮の知的障害者の卓球クラブに入会したが、人数が増え過ぎるなどしたため退会。その頃、本紙などで「スペシャルオリンピックス三郷」を知った父の晴一さんが卓球をできないかと相談し、コーチの佐藤さんともつながって、18年に卓球競技を開始。以降、障害者スポーツ大会などに出場し、卓球で実力を発揮してきた。

 海老澤さんは「全ての種目でメダルを獲れるとは思わなかった。卓球が好きなので、4年後も世界大会に出場したい」と話している。