精密画像でリスク把握 菅野福島商事

昨年からドローン事業に参入し、松伏町に対する災害対策や農業支援を行っている菅野製麺グループの菅野福島商事(大塚節子代表取締役)が、今度は最新の「3次元点群処理」技術を使って、建物や土地の測量と赤外線による点検業務に乗り出す。これに先立ち2月20日、この技術を使って同町を20ヘクタールごと81か所に分割して撮影した「松伏町全域1622ヘクタールの3Dデータ・オルソ画像・点群データ」を同町に寄贈した。
地形を精密に知ることで、今後の災害対策などに生かせるものと期待されている。点群解析では、測定対象物までの距離や大きさ、位置などが計測できる。これを使って、同社は昨年11~12月、80メートルの上空から同町全域を測量した。今後直面するであろう豪雨、地震などの災害や、少子高齢化による農業従事者不足などの課題を、町全体の点群解析によって解決策につなげることが目的だ。
災害対策では、気候変動の影響で異常気象や豪雨災害が頻発し、対策が急務となっている。点群解析の誤差は1~2センチ程度で、地域の様子や高低差などが短時間で測定できる。例えば豪雨時の水の流れや土砂崩れリスクの把握、橋りょう、道路、堤防の劣化診断、地震、水害時の迅速な避難計画策定などに生かすことができる。また、土壌や作物の健康状態の解析を行い、点群データと組み合わせて「精密農業」を実現できる。土壌分析、水管理、適切な排水計画など、収穫予測や最適な作付けを視野に入れ、生産性の向上を図る。
少子化対策と農業支援も引き続き行う。ドローンは労力をかけずに正確な農薬散布が可能だ。しかも、昨年度はカメムシの大量発生で稲作に深刻な影響を及ぼした。農家にとっては人手不足を補う有効な手段だ。贈呈式で鈴木勝町長は、「農地では高低差によって除草剤の効き目が違ってくる。ドローンによる測量はとても効果的だ」と最新技術を高く評価した。
ただ、農薬散布は虫や病気の発生に合わせた季節的なものであるため、同社グループとしては「地域貢献」と捉え、「利益は期待していない」と菅野製麺所の菅野善男代表取締役は話す。新規事業として視野に入れているのは、工場の解体や高さのある建物の面積、森林の樹高や密度などを3Dで正確に測定する測量業務や、建物の温度差によって雨漏りや崩落の危険箇所なども調べられる赤外線での点検業務だ。高低差や傾斜データも測定でき、洪水や土砂災害のハザードマップ作成、インフラ管理、防災、都市計画といった分野で精度の高いデータが取得可能となる。時間やコストの軽減も大きなメリットだ。
同社は、この事業を全国的なモデルケースとし、地域の価値向上を高めることを目標に掲げている。農薬ドローン2機、測量用赤外線カメラ搭載1機、検定や練習用の空撮機6機など9機を保有し、5人のパイロットがいることは同町にとっても大きな戦力となる。
「このデータを活用することで、都市計画の立案、防災マッピング、インフラ管理、さらには教育や研究など幅広い分野で町の発展に貢献できることを期待している。この点群解析が松伏から全国に広がっていけばうれしい」と大塚代表は話している。
