300年受け継ぐ生活用水改修
八潮市垳の水嶋勝治さん(89)が、以前、住んでいた同市大曽根668の1にある井戸水を「廻向の泉」として改修し、2月24日、竣工式を行った。八幡神社の恩田栄治宮司が祝詞をあげ、参加した約20人が完成を祝った。
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水嶋さんは「地震などの災害で水道管が破壊されると水は出なくなるが、地の底から湧き出している井戸水なら水源として活用できる」とし、「地域で防災用の水源として活用してほしい」と話している。
「廻向の泉」は300年以上続く水嶋家に代々受け継がれて来た井戸水で、地下約50㍍から湧き出ている清水。明治時代頃から農業を営んで来た水嶋家では、収穫した野菜を井戸水で洗うことも多く、生活用水としても活用してきた。
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しかし、2005年にTX(つくばエクスプレス)が開業し、現在も続く八潮駅周辺の大規模土地区画整理事業により農業を廃業。大曽根から垳に転居することになった。しかし、井戸水があった場所は残されており、元々、町会長として地域の防災などに力を入れていたことや、代々使用していた井戸水を地域の人々に大切に使ってもらえればという思いが重なって、「廻向の泉」を設置することを決めたという。
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「廻向」とは仏教用語で、「回向」とも書き、自分が積んだ善行の功徳を他人に向けることを指す言葉。
ただ、井戸水の水質検査を今後も定期的に行い、その費用を個人で負担するのは難しいため、水嶋さんは「あくまでも地域防災用の水源。飲み水としては適さない旨を表記する」と話している。